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2016/05/27 02:07
思い出のダービー
私がリアルタイムで見た初めての3歳(現2歳)王者は70年のロングワンだった。レースぶりは堂々たるもので、前年の3歳王者タニノムーティエがダービーまで突っ走ったこともあり、ロングワンに惚れ込んだビギナーの私はクラシックまで快進撃が続くことを信じて疑わなかった。
ロングワンは父がスプリンターのサウンドトラックで馬体も410kg台。現在なら迷いなく短距離路線を選択するところだが、当時は血統にかかわらず距離をこなさなければ評価されない時代。明けて4歳となったロングワンは当然のようにクラシック路線を歩んだ。
だが限界はすぐにやってきた。きさらぎ賞で後の二冠馬ヒカルイマイに敗れ連勝が6でストップ。捲土重来を期した弥生賞でも見せ場なく8着に終わり、後日骨折が判明してクラシックを断念。私の夢も潰えたのである。
ロングワンが夢破れた翌年、弟のロングエースがデビューした。こちらは父が英ダービー馬ハードリドンで500kgの巨体。大型馬にありがちな腰の甘さから仕上がりが遅れたが、クラシックの日程が流感の影響で大幅にずれたのを追い風にして名乗りを上げ、兄が敗れた弥生賞を快勝して主役に躍り出ると、世に言う「七夕ダービー」でランドプリンス、タイテエムとの熾烈な競り合いを制してついにダービー馬の栄誉に輝いたのである。
ロングエースの雄姿を見ながら、私が兄・ロングワンに思いを馳せたことは言うまでもない。
ウインジェストを母に持つこの兄弟は、ビギナーの私に血統の面白さ、奥深さ、残酷さを身をもって教えてくれた「名教師」だった。