父さん、これがあなたの血なのですね　2021 エリザベス女王杯11日前

「最後の坂が上（ノボ）れません
父さん、これがあなたの血なのですね」

小学生の頃、ラジオから流れてきたフレーズだ
おそらく何かの物語
朗読をしていた、その一部かもしれない
話の前後は覚えていない

父の車の中、そう記憶しているが、
その他の状況は記憶にはない
このフレーズだけが、今もずっと頭に残っている

まだ幼かった僕は、競馬自体に興味は示さなかったが、
その表現方法にひどく惹かれた

そしてそれは、やがてたしなむ競馬への感情を、
ある方向へ促し続けていたのかもしれない

なにか運命を嘆くようなこの物悲しいフレーズは、
幼い僕の心に影を落とした

――大人になってから思うに、これは嘆いてはいない
受け入れている、そう感じるようになったが――


社会人になり、寺山修司という人が、競馬のエッセイを書いていることを知った
何冊か本を読んでみたが、このフレーズは出てこなかった
すべて読んだわけではないが

ただ寺山修司はこんなことを書いていた
「競馬が人生の比喩なのではない、人生が競馬の比喩なのである」

そして僕が読んだ寺山修司は、馬に言葉を与えてはいない
競馬を人生の比喩にしたくないから、そう僕は解釈している

だとしたら前述のフレーズは、
寺山修司ではないのだろう


「最後の坂が上（ノボ）れません
父さん、これがあなたの血なのですね」

これは誰の言葉か、何のフレーズか、
ご存じの方いらっしゃいませんか？