キセキの第九　2021 有馬記念7日前

日曜はたいてい仕事だ

以前は競馬番組を録画し、後でゆっくり見ていた
いつしかJRAのホームページでレース映像を見られるようになり、
枕詞すらなくレース映像のみの確認

競走馬を振り返るとき、レースを振り返るとき、
その様が目に浮かばない
そんなことが常になる
馬柱を見ても、機械的なデータベースとして記憶を引き出すだけ

賭けた背景、
獲った背景、
それを思い出すことができても、
過去映像では味わえないリアルタイムの興奮を実は、
知らない

そんな僕でもキセキという競走馬、そのレースは、
web上のレース映像だけでも競馬場の熱を感じさせてくれる

泥んこの菊花賞は序曲
その走りはやがて交響曲へ

2018年ジャパンカップ
アーモンドアイの限界突破を思い出すとき、
必ずキセキの逃げを、その抵抗を思い出す

しかしその逃げは幸か不幸
その後、調教騎乗すら躊躇され、暴走馬のレッテルが

そんな折、武豊との宝塚記念
あっと驚く折り合いから、痺れる捲りを見せる
クロノジェネシスが名馬になったこのレースにも、キセキがリンクする

ピークを過ぎても競馬界の節目を演出する
コントレイルの引退レース、2021ジャパンカップ

華の無いレース振りにキセキ、１コーナからの捲り
どっと盛り上がる競馬場
webのレース映像でさえ、手に取るようにその空気を感じ、
僕は静かな室内で、パソコンのモニタ越しに手をたたいて喜んでいた
コントレイルの引退レースを思い出すとき、僕は必ずキセキを思い出すだろう


2021年有馬記念
クロノジェネシスの有終の美を飾るレースになるのだろか
あるいはエフフォーリアやタイトルホルダー、
名馬への認証レースになるのだろうか
はたまたあっと驚く伏兵が、万馬券を演出するかもしれない
そうだよな、キセキは勝てないのかもしれない

ただ勝ち馬と共に、
記憶に残るのはキセキだと思っている
逃げたとしても、
出遅れたとしても、
１コーナで捲って行ったとしても

キセキのラストラン、
アンコールは無いらしい
せめてもの惜しみない拍手を送ろうと思う

勿論、勝ってもいいんだぜ
君の馬券は少し買っておくから