コラムその12 「衝撃」〜飛翔編〜

3冠馬となったディープはその年のクラシック有馬記念に3歳馬ながら出走する。古馬との初対決だ。観客は１６万人超、人気投票は第1位だった。いつも通り後方からの競馬となる。しかし・・・様子が違っていた。いつもはディープ同様後方からの競馬を選択する馬が先団3番手にいた。その名はハーツクライ。鞍上ルメールの奇策だった。手応え良く抜け出すハーツ、そしていつも通り追い上げるディープ、逃げるハーツ、追うディープ。戦慄が走った。まさか。。ディープは半馬身届かなかった。観客がどよめく。ファンの心の叫び（ハーツクライ）が寒空にこだまする。初めての敗北。しかし、この敗北がディープをさらなる高みに導くのであった。

翌年の春緒戦、阪神大賞典。後に12歳まで現役として活躍する、スタミナの鬼トウカイトリックを退け3馬身半差で快勝。
翌月、迎えた天皇賞春は横山典が手綱を取るリンカーンを3馬身半差で撃破。走破タイム3:13.4。レコードの完勝だった。武の指は4冠の証、4本を指す。因みに2着リンカーンの走破タイムは3:14.0。このタイムはなんとマヤノトップガンの持つレコードよりも速かったのだ。横山典はレース後、口にした「時代が悪かった」と。そうだ、ディープと同じ時代に産まれてなければリンカーンはレコードホルダーの輝かしいG1馬となっていたのだ。それだけディープの存在と能力はズバ抜けていたのだった。

次走は宝塚記念。ファン投票は当然第1位。このころディープは圧倒的な強さと人気を手に入れていた。ナリタセンチュリーを軽々と撃破し、G1、5勝目を勝ち取った。武の指は5本を指す。武の掌は何を掴むと言うのか。正に凄まじい強さだった。歴代最強との呼び声も高かった。武は言う「世界にこれ以上強い馬がいるのかな」

そして、国内最強の名を欲しいままにし、ディープは世界へ旅立つのであった。
その背中にはまだ見えぬ翼。
今、正に広げようとしていた。。

ディープインパクト、お前のその凜とした
瞳が見据えるもの、それは世界だったのか・・・

後編「ペガサス編」へ続く。