67件のひとこと日記があります。
2016/11/28 06:40
コラムその20 「愛」
命を燃やし走り続ける。サラブレッドの宿命。ただ速く走ることだけを追い求められ世に生を受ける。ゆえにその脚に負荷が掛かり過ぎると故障を発症する事もある。予後不良。そして安楽死。命あるものは必ず天へ召される。だから人は馬を愛する。そして時に馬も人を愛する事があるのだ。自身の身が危険にさらされても尚、人に尽くす。それが人々の胸に痛烈に刺さり、競馬がただの賭け事では無いということを思い知らされる。
サイレンススズカ・・・「異次元の逃亡者」
栗毛の馬体に映える緑のメンコ、そして美しいシルエットの馬体。彼の武器と言えば「逃げ」である。とは言え普通の「逃げ」では無い。通常、逃げ馬はスタート直後から出来る限りのスピードで逃げる事で後続とのアドバンテージを作る。そして、レース中盤から終盤にかけて、追い上げてくる後続に、そのアドバンテージを使い果たす前にゴールを狙うスタイルである。だがその稀代の逃げ馬はスタートからゴールまでとにかく速いのだ。並外れたスピードを持続させる事によりそのままゴールを駆け抜ける圧倒的な「逃げ」、正に影をも踏ませぬ「逃げ」なのだ。
そんなサイレンススズカも初めから並外れた武器を持っていた訳ではない。現にデビューから1年間は特に目立った成績を残してる訳では無かった。この馬の能力を覚醒させた1人のジョッキー。そう、武豊との出会いが彼の能力を一気に解放させたのだった。1年にも満たない僅かな期間でG1宝塚記念を含む6連勝を果たす。武は彼のスピード能力を最大限に活かす「逃げ」の才能を開花させたのだった。武はそれを「他の馬との絶対的なスピードの差で結果的に大逃げの形になっているだけ」と表現している。
そして・・・運命の日がやってくる。。
98年11月1日、天皇賞秋。1枠1番、1番人気。優勝を予感させる1並びだった。武豊騎乗のサイレンススズカはいつもと変わらなかった。スタートから逃げる。影をも踏ませぬ得意の逃げだ。カメラが引いても引いても後続が映らない。1000m通過は57.4秒、超ハイペース。レース中盤ですでに勝利を確信させる差を付けていた。しかしその時だった。最終コーナーで突如失速。足を引き摺りながらコースを外れていく。悲痛な魂の叫び。そう、それがサラブレッドという生き物の限界だった。左前脚粉砕骨折。故障発生時、スズカは何度となくバランスを崩しながらもその脚で最後まで懸命に立ち続け、武を背中に背負い続けた。馬も人を愛するという証しを体現して見せたのだった。
「私を愛してくれた人々の為、だからあなたを助けたい」痛烈な痛みに耐えながらも、そんな声が聞こえてくるようだった。
こうしてスズカは最後の直線を迎えることなく生涯最後のレースを終えた。
最後まで・・・最後まで走らせてやりたかった。。
1998年11月1日 サイレンススズカ安楽死
享年5歳
短い命の炎を一瞬に燃やし、その生涯を駆け抜けた・・・
彼は故郷である北海道の稲原牧場で今も静かに眠っている。私は想う。今でも天国で、そのスピードで駆け回っていると良いなぁ。。そして毎年、多くのファンがその死を惜しむように墓参りに訪れる。人から愛され、また人を愛したサイレンススズカ。人と馬との愛の形、そして絆を示してくれたお前の事を決して忘れる事は無いだろう。。
〜完〜
追記
武は後にこう語る。
「なかなか居ない。あのトップスピードで、あれだけの骨折をして転倒しない馬は。僕を守ってくれたのかなと思いましたね。今でもすごくよく、サイレンススズカ のことを思い出すんですよ。せめてあと数百メートル、走らせてやりたかったな。うん、すごい残念。今でも悔しいですもん」と。
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アイルさん
あおゆうさん、こんばんは^ ^
ありがとうございます(*^^*)
私も競馬見始める前の話なので
生でスズカの勇姿を見たかった
なぁっていつも思います。
今は便利なもので携帯一つで
何時でも昔のレース観えます
からね〜^ ^ -
あおゆうさん
こんばんは!
ウォッカに続きサイレンススズカも心に沁みました!
文字でここまで惹きつけられるならその時に競馬を知っていたら更に感慨深いんだろうなぁと… -
アイルさん
たかやんさん、こんばんはm(_ _)m
泣けますよね( ; ; )
でもこう言う話も含めて
競馬の魅力なので、悲しい話でも
今後また書いていけたらな
って思います。
スズカのような個性派が出てくる
と競馬界も盛り上がるんですけどね
f^_^; -
たかやんさん
アイルさん、こんばんは!
コメントが遅くすみません。
本当に泣ける話です。
もうこのような馬は現れないのでしょうかね⁉ -
たかやんさんがいいね!と言っています。
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とっちゃんさんがいいね!と言っています。
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アイルさん
ロッキーさん、おはよう
ございます(^o^)
もしもの話ですね^ ^
スズカは小さな馬体で綺麗な
シルエットだったのでそんな
仔達が産まれて来たのでは
ないでしょうか。
小さな馬は揉まれやすいので
自然と父のように逃げ馬になっていたかもしれませんね(笑) -
ロッキーさん
種牡馬になったてたら、どんな子が出てただろうか?
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ロッキーさんがいいね!と言っています。
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アイルさん
エースさん、こんばんはm(_ _)m
本業の方、お疲れ様です。
スズカは不屈の馬ですね( ; ; )
武さんが言う通り故障後
倒れなかったのは鞍上を守り
たかったに他なりません。
スズカのトップスピードは現在
でも恐らく最強クラスです。
そこからの落馬は鞍上に致命傷を
与える事になりかねません。
スズカの愛と不屈の魂をそこに
見た気がします(^-^)