コラムその43 「馬のご機嫌」

動物には確実に感情が存在します。一つ例を挙げてみます。オランウータンに手話を教えた所、ある程度のコミュニケーションが取れるようになりました。ある日、そのオランウータンの子供が死んでしまった時、なんと手話で「悲しい」と表現したそうです。確かにオランウータンは知能が高い動物です。でも、それは馬にとっても同じです。馬の気持ちや感情を知りたいとは思いませんか？

では、馬の気分や感情を知りたい時、私達はどうしたら良いのか。「今日気分はどう？」って聞いて「ん？まあまあ」なんて返事してくれたらどんなに楽な事でしょうか。まぁ、黒柳徹子さんはネコと話が出来るそうですが（笑）そんな特殊能力を持たない私達が馬の気分を知りたい時、ズバリ、馬の仕草を見れば大体分かるのです(^ ^)もちろん、上のイラストの馬（G.Sさん）のように何考えてるか分からない方もいますが（笑）

では、まず馬の「耳」に注目しましょう。馬はとても音に敏感な動物で、耳が非常に発達しているんです。その耳は10種類の筋肉に支えられ、まるでレーダーのようにクルクル回ります。そのお陰で、前後左右と自由に耳の向きを変えることができるため、立体的に音を聞き取る事が可能となります。そして、大事なのはその耳の状態を見る事で、その馬の気分や感情をある程度読み取ることが出来るんです。いくつか例を挙げていきます。

◎耳を前に向ける
平静な精神状態。その状態で何かをじっと見るのは注意や関心を引かれているとき。

◎耳を横に向ける
気持ち良くリラックスしている状態。ただし、調子が良くない時と似ているので、表情と合わせて見ると体調が分かりやすい。

◎耳を前と後ろに動かす
一方を前に、他方を後ろに向け、それを互い違いに動かす時は、怒りを感じている。

◎耳をクルクル動かす
左右の耳を違う方向に動かし、視線が定まらず、低く嘶（いなな）くのは不安な心理状態。

◎耳を後ろにしぼっている
敵意や警戒心を示している。さらに歯をむくのは威嚇の表情。
レース中に耳をしぼるのは、後続馬に迫られた時など、余裕がなくなっている証拠。またゴール前で追われれば、耳をしぼって必死に頑張る。ちなみに、走りに余裕があるときには耳を立てている。

どうでしょうか。耳の動きには色々な意味や感情がある事が分かりますよね。では、次に耳以外の仕草や動きについて見ていきましょう。例を挙げていきます。頭でイメージしてみて下さい。

◎気分が良いとき
高い声で長く嘶（いなな）くのは嬉しいとき。尾を高く振り、軽やかに歩く。

◎驚いたとき
鼻の穴を大きく膨らまし、鼻息を吹いたりして、荒い息を吐く。

◎威嚇している表情
耳を後ろにしぼって、口を突き出し、歯をむき出して、攻撃的な表情をする。

◎蹴ろうとしているしぐさ
耳をしぼり、頭を下げ、尾を巻いて後ろ脚をこごめたり、尻を向けたりする。

◎エサがほしいときの前掻き(まえがき)
前脚で地面をかくような仕草をする。前掻きは疝通の時などにも見せる。

◎信頼している人に甘える
目を細めて、頭や鼻面をすり寄せる。パドックで若馬がときどき見せる仕草。厩務員さんに甘えて可愛いですよね。

と、こんな感じです。耳と体の動作を合わせて見ると、その馬がどんな感情にあるのか、何を考えているのかがある程度分かります。特にパドックでは耳に注目すると、元気が良いのか、リラックスしてるのか、警戒してるのか、怒っているのか、と色々分かります。予想に役立てるには達人レベルの観察眼が要りますが、普段から注視してるとそのうち馬の気持ちが分かるようになるかも知れませんね。もし、街で馬とばったり出会った時は、まず耳を見て、そして仕草と表情を見て、是非会話してみてあげて下さいね「今日気分はどう？」「ん？まあまあ」なんて言ってるのかも知れません(^ ^)