大井の名馬(オリオンザサンクス〜破天荒な逃亡者)

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『うーんどうしよ』
『何を悩んでるんだい？』
『いやぁ…デビューした時にどんな戦法が良いかなと』
『気が早いなぁ(笑)キミは決められないよ？』
『ですよね…』
『でも居たよ…デビュー前から戦法が決まっちゃった馬がさ』



追い込み馬はハラハラドキドキ…届くか届かないかと馬券を握り締めて観戦する逆に逃げ馬も同じ『逃げろ〜』『そのまま〜』いかにもスリル溢れる

大井競馬場の逃げ馬として代表的なのがオリオンザサンクス□
生粋の逃げ馬でした
道営から転入し、ヤネを任されたのは早田秀治騎手。しかし…その余りの暴れっぷりに手を焼きますまともに調教すら出来ない』これではクラシックどころかデビューすら…
腕利き厩務員と二人三脚で、どうにかまともに走れるようになったサンクス
全日本３歳優駿に出走スピードに任せて逃げたら大変な事になる…早田騎手は抑えに抑えるこれが裏目で惨敗を屈します
逆にあれだけ抑えて好位に付けたんだから、離したらどれだけの速さがあるのか？

京浜盃では覚悟を決めての大逃げ文字通りの逃亡者ぶりで…圧勝を飾る

しかし東京王冠賞では、連戦による疲れからか…状態面に不安を生じ石崎隆之のオペラハット、的場文男のタイコウレジェンドに差され三冠馬の夢は途絶えます
この頃の早田騎手は、「重賞請負人」とゆう異名を持つ実力派として、活躍をしていましたが…絶頂期の石崎・的場に力を付けた内田らに押され中堅騎手として鳴りを潜めていました

『もう一度…大舞台で活躍したい』

早田騎手の執念も通じたか、三冠目(当時)の東京ダービーでは影をも踏ませぬ大逃げが復活タイコウレジェンド騎乗の的場騎手のダービー制覇を阻みます
こうなれば当時はまだ『お祭りレース』だったＪＤＤの地方代表としての役割が待つ
三冠を全てハイペースで逃げた代償から…状態は平行線を辿るのが精一杯相手は中央馬で、厳しい戦いを覚悟する
中央の大将はタイキヘラクレスオリオンザサンクスとの一騎打ちムードが漂う

ゲートが開く…いつものようにスタートダッシュから一気にハナへ

しかし早田騎手は焦る

全く抑えが効かず…暴走状態見る見るうちに差は開き、大井では珍しい１０馬身以上離す大逃げに
場内は人気のオリオンザサンクスの逃げに沸くが…

『これじゃ直線を前に垂れる』

場内とは裏腹に早田騎手は惨敗を覚悟…
直線までリードを保つも、やはりオーバーペースから脚がパッタリ止まる

差して来たのはタイキヘラクレスでは無く、王冠賞馬のオペラハットでした□脚色は全く違う…残り１００

『頼む…持たせてくれ』



２頭が並びゴールイン…思わず早田騎手はオペラハット石崎騎手の方に顔を向けた
クビだけ凌いだオリオンザサンクスが勝利しました

変則三冠馬と言うべきか…当時はお祭りのＪＤＤ□しかし埋もれがちだった早田騎手の生え抜きの意地を感じたレースでした

オリオンザサンクスは中央にも参戦勝利は叶わずも果敢な逃げでファンを魅了
古馬になってからはイマイチでしたが…早田秀治を再びスターダムにのし上げ、同時に３歳時に魅せたレースぶりは永遠に記憶に残るモノです

大井競馬場の顕彰馬の１頭



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『逃げ馬…格好良いですね〜』
『ロマンを感じる素晴らしい逃げだった□キミも逃げ馬になるなら…サンクスのような馬になりなよ』
『とりあえず…無事にデビューしないと』
『…的場さんね？』
『………。』