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2017/12/07 21:00
「最強」13年産組、失速の背後にあるもの
2017年ここまでに見えてきた傾向はある。「最強」の呼び声が高かった現4歳世代(2013年産)の失速である。ジャパンカップでは、現在の競馬をリードする5歳世代のシュヴァルグラン、キタサンブラックの間に、今年のダービー馬レイデオロ(牡3)が割って入った。4歳勢では昨年のダービー馬マカヒキが4着に食い込んだが、3着キタサンブラックとは4馬身の大差。マカヒキとともに「3強」を形成し、昨年の3歳三冠タイトルを分け合ったサトノダイヤモンド(16年菊花賞、有馬記念優勝)は今秋のフランス遠征で惨敗した後、年内休養が決まっている。ディーマジェスティ(16年皐月賞優勝)に至っては今秋は一度も走らないまま引退、種牡馬入りした。3強だけでなく、昨春のクラシックに駒を進めた組はその後、全く存在感が薄い。13年産世代の失速の背後に何があったのか。
「暗」の4歳世代。昨年の皐月賞、ダービー出走馬のその後を見ると、ディーマジェスティ以外に皐月賞、ダービーとも5着のリオンディーズ、G2の青葉賞優勝でダービー13着のヴァンキッシュランが昨年のうちに引退。G2の京都新聞杯優勝でダービー6着のスマートオーディンはダービー後、1年半も戦列離脱中だ。昨年の皐月賞は珍しく1勝馬が出走しており、この組からミッキーロケットが秋に神戸新聞杯(G2)で2着。1月に日経新春杯を優勝。このほか、ミライヘノツバサもオープンに昇格し、日経賞で2着と健闘した。このほか、ロードクエスト(皐月賞8着、ダービー11着)が昨年9月にG3を1勝。ダービー16着のマイネルハニーが昨年末にG3を1勝したが、全般的に存在感は薄い。
トップクラスを見ると、マカヒキも引退したディーマジェスティも、ダービー後の勝利は秋初戦の1度だけ。唯一、秋以降も順調だったのがサトノダイヤモンドで、神戸新聞杯、菊花賞の後に有馬記念でキタサンブラックを抑えて優勝。「来年はこの馬の天下」と思わせたが、今年は阪神大賞典優勝の後、天皇賞・春でキタサンブラックに返り討ちに遭い、シュヴァルグランにも競り負けて3着。連勝も4で止まった。秋の仏遠征での惨敗は記憶に新しい。
マカヒキは昨年、サトノダイヤモンドは今年、それぞれ凱旋門賞に遠征して惨敗した。マカヒキは前哨戦のG2、ニエル賞を勝ったものの本番は14着。サトノダイヤモンドは前哨戦のフォワ賞(G2)も4着で、本番も15着。2戦とも道悪だったが、それ以上に体調が本物でなかった疑いがあり、結局は年内休養となった。ここ2年の凱旋門賞が例年のロンシャンではなくシャンティイで行われたことも影響したか。実際、3頭が遠征した14年凱旋門賞(ロンシャン)の後、6着のハープスター、8着のジャスタウェイは短い間隔でジャパンカップに出走。ジャスタウェイは2着、ハープスターは5着と崩れずに走った。昨年のマカヒキは帰国後の戦列復帰が今年2月にずれ込み、復帰後は5戦して3着が最高と伸び悩む。
その意味で、マカヒキとサトノダイヤモンドは「遠征に出ていなければ」との想定も成り立つ。ただ、サトノダイヤモンドは遠征前の天皇賞・春でも3着に敗れており、既に「成長が止まった」との見方もあった。有馬記念は斤量が2キロ重いキタサンブラックと首差。天皇賞・春は同じ58キロだから、机上の計算なら逆転もあり得るが、3〜4歳の成長期だけに期待外れだった。
ここで考えざるを得ないのが、ディーマジェスティも含めて、3強がいずれもディープインパクト産駒だった点である。昨年春の3歳クラシックは皐月賞もレコードに0秒1差で決着するなど、レベルを疑う人はいなかった。「3歳春でこのレベルなら、4歳になればもっと成長するはず」と誰もが期待した。だが、意外に伸び悩む現状を見ると、「ディープ産駒が早い段階から負荷の高い競走を重ねると、伸びが止まる(燃え尽きる?)のでは」との仮説にたどり着く。
実際、現3歳世代の活躍馬の中でディープ産駒は皐月賞馬アルアイン程度しかいない。レイデオロは父キングカメハメハ、スワーヴリチャードは父ハーツクライ、ディアドラ(秋華賞優勝)とモズカッチャン、ペルシアンナイトはハービンジャー産駒だ。ディープ産駒の16年2歳王者サトノアレスを管理する藤沢和雄調教師(美浦)は今年初め、「(同馬のように)2歳時に5回走れたディープ産駒は珍しい」と話したことがある。一戦一戦、力を出し切るため、心身の未完成な2歳馬には反動が大きいのだ。使う側も楽な日程を組むように留意してはいる。だが、能力馬が戦えば競争は厳しくなり、いや応なしに負荷も大きくなる。それが後の成長の余地を削っているとしたら…(※次に続く)