競輪
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2025/03/04 23:47
開業から１年…調教師・福永祐一の現在地その先に見据える確かな理想像(東スポ
瀟洒（しょうしゃ）なレンガ風の外壁をまとったトレセンの一角。風に舞う雪が洗練されたたたずまいをいっそう際立たせる厩舎に足を踏み入れれば、蹄（ひづめ）の跡とチップ、職人たちが残したわずかな砂さえ目についてしまうほど整然とした空間が広がる。馬に心地良いという暖色照明は落ち、思い思いに馬房で安寧の時を過ごす調教終わりのアスリートたちを横目に、引き戸を開けて大仲へ。向かい合った先に調教師・福永祐一がどっしりと腰を下ろす。師の右側には目新しい大中小の壁掛けモニター、その下、封の解かれていないハンドモップにはまだ出番が訪れていないようだ。
「これから調教師としての本当の難しさや苦労に直面していくのかなとは思いますが、厩舎を移転して自分の望むような設備が整い、したい管理ができる形になりました」フラッシュ、拍手、涙、「ありがとう」。騎手、調教師、馬主、ファン、そして心配を寄せながら温かく見守り続けた家族。２０２３年JIS+2D60３月４日JIS+2D61の阪神競馬場。全盛期にして「最高の騎手人生」に別れを告げたトップジョッキーは、技術調教師を経て２４年に開業。今年場所を新たに、愛馬を勝負の場へ送り出す時を過ごしている。
「１年たってイメージしていたことと違ったというのはそこまで多くなかったです。なぜかというとずっと具体的にイメージしていたから。ジョッキーのころから関わる馬のことを長いスパンで考えていたし、自分はそういう関わり、他のジョッキーと違う経験を積めていたことが大きかった」膨らませ続けたビジョンは、はじけることなく現在に結びつく。水、木曜日の追い切りに騎乗し競馬場での週末に備えるルーティンからトレセン通いの日々。数キロ増えたという体重は一目ではわからず、馬上で入念な運動をこなしコースでは人馬一体風を切る姿が日常になった。
「日々の普通キャンターをどう質の高い動きにしていくかの方が、追い切りをどううまくやるかというより、自分の性に合っているというか、楽しさを感じている部分です」調教師となっても変わらないのは強みと足りない点、自らの立ち位置を適切に把握していること。それは広い視野から自らに不足するピースを埋めていった騎手時代と同様、物事を俯瞰できている証しだ。師はその判断基準のひとつを「経験則」と表現する。あまたの偉業を成し遂げ、一流馬の手綱を任されて培った騎乗技術は何よりの強みである。
「これだけ数多くのＧ�鞠呂望茲辰討�た経験は大きな財産です。その馬たちがどのようなフォームで走っていたか、調整過程を踏んできたか、調教メニューが適しているのかというのは経験則があるので、そこが一番の強みだと思いますし、今最大限に生かさない手はない。福永厩舎で福永祐一が調教に乗っているというのは、一つの売り、強みだと思っています」ＪＲＡ歴代４位の２６３６勝、３４度のＧ�祇�覇は地方・海外を含めれば４５勝にまで及ぶ。日米で輝いた名牝とその息子も、無敗の３冠馬をはじめとする３頭の日本ダービー馬も…記録、そして我々の心に深く刻まれるスターホースたちの背を知る調教師など、他にはいない。馬乗りの一人として加わる追い切りは角馬場でのフラットワークを行ったうえで、馬場の荒れ出した時間帯に実施されることが主。その光景を見てふと疑問を抱く。前者は藤原英昭厩舎、後者は友道康夫厩舎…ともに騎手として馬づくりに精力的に携わり、ダービーの栄光をつかんだ両トップステーブルの融合ではないかと。ベースの部分では首肯しつつ異なる点もあるという。それは２厩舎に限らず他にもタイプの異なる数々の厩舎にかかわってきた自負ゆえに。
「長距離と短距離、芝・ダート、牡馬・牝馬。それぞれ得意な厩舎のスタイルを見ていたので、どのようなメニューで調教を組むべきか、そこにも自分が持っている経験則があるんです」
「調教師のようだった」。騎手・福永祐一はこう表現された。厩舎サイドと密にコミュニケーション、建設的な議論を重ねる姿があってのことだが、これに対しては「そうは思わない」と否定する。レース出走への道筋が立った中で調整過程に登場する仕上げ人がジョッキーなら、疲労のケアをはじめレースへ向けての足場固め、道筋をつくるのは厩舎。担う責の違いを理解していたからだ。反対側に回った今、不足する引き出し…騎手として直接接することが少なかった箇所を埋め合わせていく。机上の学習のみならず実際に一頭一頭に接しながら――２０代の１人を除き、全員が４０代以上の――経験豊富なスタッフたちの助言も参考にし、自らの糧としていく。
「この程度の状態なら乗っても大丈夫、ここまでくると脚にダメージが来てしまうというような経験則がないと、判断は下せない続
- フラッシュ
- スタイル
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続9>悪くなる時は一瞬。繰り返しですが、要は日々丁寧な管理をやり続けられるか、それに尽きる。そのうえで、馬に犠牲を強いるようなことは絶対にしない」この厩舎に愛馬とスタッフとの歩みの跡が付き始めるころには、どんな未来が待っているか――。ともに厩舎を出て一言、「これからやで」。雪が強さを増す冬空の下、浮かべた笑顔には厚い雪雲と周囲の雑音さえも吹き飛ばさんとする自信と決意が満ちている。調教師試験に一発合格し我々を驚かせたあの日、口にした決意も絶えず胸に秘めて。「馬にとって、ベストの選択ができる調教師でありたい」
【プロフィール】
福永祐一（ふくなが・ゆういち）１９７６年１２月９日生まれ、滋賀県出身。父は通算９８３勝、９年連続年間最多勝を記録した福永洋一元騎手。９６年に北橋修二厩舎所属として騎手デビューし、同年ＪＲＡで５３勝を挙げてＪＲＡ賞最多勝利新人騎手を受賞。２０１１年に同最高勝率騎手を受賞し2025/03/05 00:01
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続8>するマインドがある。「３歳馬が主軸になり、２歳世代も入ってきて自分が選んだ馬の割合が増えてくる。最初から育てる馬の比重が大きくなり、より評価に表れることにもなる。結果が上がらなければ選ばせてもらうこともできない状況になってくるし、結局は技術なんです。ジョッキーの時は人から求められないようなら去らなければいけないと思っていたし、それは調教師にしてもそう。研鑽を続けている人とそうでない人の差は如実に表れる。プロ意識と技術向上意欲は持ち続けないといけない」究極の形として、厩舎設備のほかにも「育成や近郊牧場での管理、そして現役を退いた馬の行く先の確保まで、ゆくゆくは一元管理できれば」という理想も抱くものの、それも今まさに始まった「本当に自分が評価を下される時」を勝ち抜かなければ絵に描いた餅になる。だが、だからといって特別なことをするわけではない。「馬は急にガラッと良くなったりはしない、でも悪
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続7>この視点は立場を変えてから持つようになった。
「ジョッキーとしてはそこまで考えないし、考えるべきところでもない。永遠に自分が乗れる保証もないわけだから。もちろん今でも勝たなくていいやとは思わない。ただ厩舎の運営や馬主経済のことも考えれば、３着に入れる可能性が高い状態にして使っていきたいなと思っています。そこでジョッキーがいい騎乗を見せてくれたりしてかみ合えば勝ち負けにもなるし、逆にスムーズにいかなかったとしても５着は外さないというような形に持っていきたい。そういった馬の使い方をしていくのが理想だと考えています」現３歳世代の積極的な重賞挑戦も決してやみくもではなく、長い競走馬生のルートを敷く一環として。良績を残せれば次のステージへ、まだ力至らなければ自己条件に立ち返るか、ひと息入れるのも選択肢になる。その根底には５歳、６歳、７歳と競走生活が続く中で長く、最も活躍できる方法を見いだそう2025/03/04 23:59
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続6>「３年」のスタート、２４年の年間成績は１５２戦１７勝、重賞は２つ。これをどう受け止めるべきか。評価する定義も様々、かくいう私が先の数字を持ち出したのも調教師の評価基準を一般的なリーディング争いとしての勝利数に置いているから。この尺度では上回る者は存在する。しかし調教師の立場に立った今、ここには表れていない数字を大切にしているという。
「複勝率…３着内率というのはすごくこだわっている数字で、高くしていきたいなと思っています」。隠れた２着１９回、３着１８回も加味した複勝率は約３５・５％。「開業初年度の複勝率が今までで一番高かった人が何％かはわからないけど…」という師に代わり数字を教えてもらうと、新規調教師の開業時期は勇退もあり一律ではないものの２０００年以降、定年調教師と入れかわりとなる３月開業の調教師では次位には約３％の差をつけるトップの成績。最重要視する記録はナンバーワンになった。こ2025/03/04 23:58
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続5>管理するか、どう乗るか。日々丁寧に仕事をしてもらいたいと思っているし、そこが一番面白い部分なんだよね。馬はそこで変わり、レースで成果に出てくる。そういうところに喜びを見いだしてほしい」。調教師となり馬づくりの最前線に身を置くからこそより強くそう願っている。
日本競馬史に燦然と名を残す、福永祐一というホースマンの第二章。１９歳で迎えた一章目と同じく、その号砲を他と比べてはるか前で聞いたことは自覚している。
「当然�狡感技佞箸靴討匹Δ覆里��瓩箸いμ椶埜�られているのは感じていましたし、だからこそ淘汰、ダメだというレッテルを貼られてしまうのも早い。大体は５年ほどで軌道に乗せていければ注目される厩舎になって、うまく回っていくところが多いと思いますが、僕の場合は５年という長い時間はもらえないだろうなと。３年である程度の評価をもらえなければ、いい循環にしていくのは厳しいのかなとは思っています」
「2025/03/04 23:58
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続4>四半世紀も前、髪を短く刈った青年の未来はここ、「イ―２２」で言霊となったのだろうか。かくしてアプローチは現実となり、開業から１月遅れで福永厩舎に加わった。自らも馬乗りに対する絶大な信頼を寄せられ、指揮官不在の際には留守を預かる。師とスタッフ双方の間に立つ「中間管理職」が、今と先について話してくれた。「僕は言われなくてもわかる部分もありますが、コミュニケーションに関しては言う通りかもしれない。ただ、祐一のスタンスとしては大枠の方向性を決めて、後はスタッフの裁量にゆだねるところがあって取り組みを進めやすい環境ですし、逆に祐一自身もその中で知らないことがあれば吸収していっている。１年たってもっとうまく回っていくと思いますよ」熟練者を中心としたメンバーにも新たな技術を探求してもらい、馬へと還元させる流れを加速させていきたいと師は思う。「この仕事は日々の管理、調教がしっかりと成果に現れる。どう
2025/03/04 23:56
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続3>でみんな仕事に対して妥協しない意識、結果を残していく意識を持っていると思います」そう教えてくれたのは厩舎の番頭格・野元昭嘉（あきよし）調教助手。元ジョッキーで、福永騎手のＧ�欺蘋�覇となったプリモディーネの１９９９年桜花賞では、親子鷹のエイシンルーデンスで果敢に逃げた。その馬名をよく言われますと表情を緩める４８歳は、師と幼なじみ。同じタイミングで競馬学校を受験したが、師が１度目の受験では不合格になったため騎手の期では１つ上に。それでも「騎手の時も�爛▲�ヨシ、アキヨシ�瓩噺討个譴討い拭弋た潅里譴親欝蘋犬任△襦Ｅ天眦�な転身の４、５年も前から「もし調教師になったら右腕として厩舎に来てほしい」と請わわれていたものの、自分が先になると思っていたそう。そのエピソードに触れて「騎手になってすぐのころ�猖佑肋�来は調教師になりたい�瓩噺世辰討い拭廚箸痢∋佞了嫋◆λ牟興て鷂議感技佞慮斥佞鮖廚そ个靴拭�今から
2025/03/04 23:55
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続2>「経験則」を補完し合うように厩舎を前進させていく。歩みは始まったばかりだが、その過程はまだ助走期間でもあったようだ。「この１年は正直、そんなに細かなリクエストは出してこなかったし、意見交換も積極的というほどではなかったかもしれない」。と同時にこうも付け加える。
「�爐いい�ら黙ってやってくれ�瓩任呂い韻覆ぁ�自分が他の人より知っている部分もあるし、知らないこともまだある。お互いの強みをうまく生かしたチームづくりをしていければと思っていますし、自分たちは技術職で、常に向上心と探求心を持って技術を高めていくという自覚、同じ志を持ってやっていきたい」自らがプロであり続けようとするように、スタッフにもプロ意識を求める。それは目指すべき方向性と厚い信頼関係が共有できているからにほかならない。「福永厩舎という名前、１年目から素質の高い馬が多く入ってくること。注目されるのはわかっていましたから。その中2025/03/04 23:54
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続>例えば�爐海譴阿蕕い覆蘊茲譴泙垢茘瓩箸いΠ娶�を聞いて、自分の中でも考えたうえで受け入れるという形も取っている」その中で大きなトラブルもなく１年を迎え、スタッフそして獣医や装蹄師等、多くの支えがあったおかげでの円滑な厩舎運営に感謝を寄せる。加えて、日々接する馬の健康面もそう。トレーニングを積むことと両輪の飼料管理は、自らも勉強を重ねる中で「ここはもうちょっと深く追求していけると思う部分」。厩舎によってはカイバの管理に磨きをかけ、役割を担う馬の栄養士「フィードマン」を設けるパターンもあるが、個人の研鑽でない形を模索している。「誰かにおんぶにだっこの形は取りたくない。それでも成立するのかもしれないけど、やっぱりウチは全員にスキルアップしてもらいたいなと思って。それぞれのやり方を追求して、話を掛け合わせた方がいいんじゃないかと。１０人いれば１０通りのやり方もできたりするわけだから」スタッフと「
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