【禅寺の裏恋物語】(36)

二軒目はかなり遠いので急がないと、昼を越してしまう。
前は海、後ろは山の地形だから、行きは上り坂、帰りは下り坂、
何とか11時半までに着けば昼までには終わるだろうと急いだ。
やっとたどり着き声を掛けたが返事がない。困ったな、どうしょう、もう一度大きな声で呼ぶと、二階から誰か降りてきた。
あ、良かった。
留守かと思いました、と顔を上げて見ると、同級生の本田聖子さんである。
世が世であれば四千石の旗本のお姫様である!
僕達男子生徒には憧れの人であった
僕は澄まし顔で住職が入院しているので、私が代理を勤めさせていただきます。
と仏間に入り準備をした。読経を初め約30分で終わり、袈裟や教本を包み、左手にもって前座敷に座りお勤めを終わらせて頂きました。
と挨拶すると、こちらに来て、と案内された。
そこは見たこともない立派な洋室の食堂である。
お昼の用意をしてあった。どうして又、と聞いてみた、いつも和尚さんが来たときは、お食事をお出しすることになっているのよ
と、鈴のようなすんだ声で答えてくれた
今日はご家族は留守ですか、と聞いてみた。
えー! 親戚のお祝いにお呼ばれなの、だったら君はお留守番しているわけ!
たぶん貴方が来るからお世話するように言われたんだけど、?…!なに、言われたんだけど、嫌だった?
と、皮肉った。すると! そうじやないんだけど、?…!
二人っきりになっちゃうじゃない。
だったらやはり僕が嫌いなんだ
違うのよ!? あなた聞いていないの?
なんの話か解らなかった。
あら本当に聞いていないの? どうしょう私ったら恥ずかしい
何で,僕にも教えてよ、このままじゃ気持ちが悪いな…!
実はね,あなたが本山の修行を終えてかえって来たら私達結婚することになっているんだって
えー! そんな!まさか…!夢にも思いもしなかった相手である
ー続きは又ー