59件のひとこと日記があります。
2011/07/29 11:53
【禅寺の裏恋物語】(56)
今は米の収穫も終わり農家では秋祭りの季節であった。お寺は此の時期の托鉢が最も大切な行事であった。
お寺の一年を賄う米を布施していただく為のものであった。
僕が手伝うのは土曜の午後から日曜日にかけてである。今日の当番は尚英さんと光竜さんであった。学校が終わり次第坊主の旅装に着替え、今どの辺りかを調べ先回りして合流するつもりで山手に向かった。 神社の森に差しかかった時、うまくそこの日陰で休憩しているのを見付け尚英さんと交代することにした。 尚英さんは高齢で、二日の通し歩きは堪える、又、足が遅いためはかどらない。
今夜の宿を頼んである本田家には5時過ぎには着かないと迷惑をかける。急ぎましょう、早速托鉢を開始した。僕らはカマスに肩紐をつけて肩に掛け、一軒一軒お経を上げてお布施の米を頂く。
これを六千軒の檀家全部を回るのだから大変である!段々重くなり持ちきれなくなってしまう。 そうした時は組長さんにカマスを新しいのに取り替えてもらい、集まった米はお寺に届けてもらうように段取りしてある!
やっと本田家に着いたのは、5時半を回っていた、まず仏壇に感謝のお経を上げ供養をしたのち、お風呂に入り用意して頂いた浴衣を着て縁側で涼んでいたら、御当主が挨拶に見えてどうぞ食事の用意が出来ていますので、と食堂に案内された、アンチークな家具の椅子式で八人掛けである。他の人は酒肴で始まるが、僕はさっさと終わらせて部屋を出ようとした時に聖子さんが僕を呼びに来た。
後について二階の聖子さんの部屋に入りとさすがに女の子の部屋である可愛いぬいぐるみや座布団が置いてあった。
毎日ここから学校に通うのは大変だね、
雨降りがねいやんなっちゃう。
所で何か話があったんじゃなかったの?
この前会った時に必ず会いに来ると約束したじゃない?
あれはどうなっているの? もう忘れてしまったのね! ズウーッと待っていたのに、一向に音沙汰無しだからイライラしちゃって、お父様にあの話しは解消してくださいと、頼んだら、笑いながら5年早いよ、二十歳になって決めたらいいと言われたわ。
今時そんな話しに従うことはないよ。
と、僕も思うよ、ただ僕らがお互いに好きになって、結婚したいと思うように愛することができたら最高だけどね!
実はね、僕はそんな関係に成りたいと願っているんだけど!?
聖子さんは下にうつ向いたまま、顔を真っ赤にして、小さな声で、私もよ
だから腹立たしかったのよ、解るでしょう