44件のひとこと日記があります。
2020/09/30 19:00
スティール君、そのまま!
荒尾競馬引退後の8才の時、熊本の牧場で出会ったスティールキャスト号。
その時、吉田牧場のファンだった年配の女性の方が引き取っておられ、
ずっとその方に大切にされて、幸せな余生を送っていると思っていた所、
9年前、北海道旅行から帰る日の朝、
「スティール君は、故郷の吉田牧場さんに帰っているそうですよ」
と友人から電話を貰い、詳しい事情を聞く間も無く
急げば飛行機の時間に間に合うと思い、慌ててタクシーで駆けつけました。
フジヤマケンザン号の全弟、フジヤマゲンスイ君と一緒に
広い放牧地で仲良く元気に暮らしている様子に安堵した事が
昨日の事のように想い出されます。
聞いた所によると…引き取っておられた方が、自分が居なくなった後の
スティール君の身を案じ、吉田牧場さんにお願いしておいたとの事で、
その方が亡くなられ、スティール君を故郷へと連れて帰る前に、
場長さんは遥々熊本まで様子を見に訪ねて来られたそうです。
行き場を失った生産馬を引き取って余生を送らせるという
馬への愛情と懐の深さを持っておられた場長さん。
沢山の大レース勝利馬を輩出する事だけが名門牧場でない事を
改めて教えて下さいました。
その吉田場長さんは「お彼岸に逝くのは徳の高い人」というそのままに
9月22日、天へと旅立って行かれました。
先日9年振りに会ったスティール君は、リボンノキシさん最後の仔マジックゲール君と、
ゲンスイ君はワカサイティングさんの母ワカオーカンさんと一緒で
別々の放牧地になっていたけれど…幸せに暮らしている姿に胸が熱くなりました。
初めて会った時から21年が経ち、29才の高齢となったスティール君、
26年前の菊花賞出走馬で存命なのはスティール君だけだと聞いています。
4角を回り、直線入り口まで先頭に立っていたあの時のように…
「そのまま!」「そのまま!」と心で叫びながら、
長生きレースの先頭を走ってくれる事を願っています。
スティール君の命を救ってくれた場長さんも、
空の上で見守りながら、きっときっと応援して下さっていますよ!
〈写真〉 上 スティール君とマジックゲール君。
下 ゲンスイ君とワカオーカンさん。