590件のひとこと日記があります。
2017/05/05 21:12
スナック・パドック「オークス出走を狙う馬・ハナレイムーン」
「ハナレイムーンって馬がいるんだ」オレが唐突に切り出した。
「ハワイのマウイ島だろ」マスターは詳しい。
「あそこのハナレイ湾から見る月は歌にもなってロマンチックなんだぜ」
少し遠くを見るように瞳を輝かせた。
「ファンディーナが勝ったフラワーCで4着になってるね」
ケンちゃんはスマホ情報を披露した。
「最後は伸びなかったけど結構食らい付いてたからな」
マスターもあのレースを覚えていた。
「陣営はオークスを狙っているようなんだよ」オレは目標を示した。
「明日勝てば行けるんでしょ」ケンちゃんも期待しているようだ。
「オークスは甘くはないぞ」マスターはオークスに関しては持論がある。
「牝の3歳馬のこの時期に1.5マイルは長過ぎる」というものだ。
「だってダービーと同じだぞ。可哀そうだろ」
「そうだよね。2400mは長いね」ケンちゃんも乗った。
「だな。桜花賞・1600mと秋華賞・2000mの間だから1800mだな」
マスターの考えもほぼ同じだ。
「でも、オレ達がここで叫んだって2400mは変わらないからな」
さっき頼んだ燻りがっこをバリバリ言わせながらオレがそう言うと
「まっそうだよな。オークスは1.5マイルだ」
マスターは何度も頷いている。
オークス出走を狙っているハナレイムーンは負けられない。
明日の5レースに出て来る。3歳牝馬限定500万下の条件戦だ。
ハナレイ出走とあって8頭しか集まらなかった。
これといったライバルはいないので黙って走れば勝てるレースだ。
馬主が「金子真人ホールディングス」で、厩舎は美浦・堀である。
陣営は必勝態勢で臨むはずである。
だがしかし、条件が揃い過ぎたときの「取りこぼし」が怖い。
「だから念を押しなさいって何度も言ったのよ」桃ちゃんは怒っている。
友達の華子さんが結婚を目前にして彼氏に逃げられたというのだ。
「華子はわたしから見たって容姿端麗、眉目秀麗で、男が十人いたら
十人が振り返ってしまうほどのいい女なのよ」
桃ちゃんは生中ジョッキの取っ手をしっかり握ってグビりと飲んだ。
カウンターにトーンと響きの良い音を立ててジョッキを置いて
「許さない。あの男、許さない」桃ちゃんは怒っている。
「脇が甘いな」ケンちゃんが口を挟んだ。
「おい、ケン坊、お前は黙ってな」
桃ちゃんの細くて長い人差し指がケンちゃんの顔面に突き刺さる勢いだ。
「油断したのよね。自分に自信があり過ぎたのよね」
桃ちゃんは小さく頷いてそう呟いた。そして、
「男なんて五万といるんだからさ、ねっ?」
今度はケンちゃんに同意を求めた。ケンちゃんはその熱気に押されて
3回ほど小さく頷いただけだった。
華子さんには他に結婚相手は五万といて今回の失敗は「いい経験だった」で
済まされるがハナレイのオークス出走権は一生に一度だけのチャンスだ。
明日失敗したら大きな後悔を残すことになる。
ゲートは上手いし、先行して抜け出すレースを得意としているハナレイだ。
すんなりレースを運んで直線の坂上では余裕のガッツポーズを見せて欲しい。
ハワイのハナレイ湾から仰ぐ月のように多くの人に希望を与えてくれ。
そしてオークスに出走してさらに多くの人に夢を与えて欲しい。
「相手にはどの馬がいいんだ?」マスターがスマホの出馬表を見ている。
「エイプリルミストかな」ケンちゃんが押す。
「前走は府中の2400mで上がり33.9秒だからな」オレもそこには注目している。
しかし、「ウォーブルがいいと思う」と続けた。
「前走は1番人気だったのに4着に撃沈っすよ」とケンちゃん。
「あれは道悪が全てだな。」敗因を明かして
「最近のあの馬、程良い気合が乗って走る気が出て来ているんだ」
と馬体の良さをアピールした。
さぁ!相手も決まって、あとは結果を待つばかりだ。
人気になる馬から行くのだから大きなリターンは期待できない。
絞って絞って絞り抜いての勝負と行こう!良い結果が出ると良いのだが...。