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2017/05/07 09:11

スナック・パドック「ハナレイムーン」レース後

「勝春にやられたな」オレは苦虫を噛みしめた。
「いつもの競馬じゃ物足りないと感じたんだろうな。
3コーナー手前でスパートしたもんな」
マスターは冷静に振り返る。
「2着に粘ったんだから好騎乗と言えるよね」
ケンちゃんにもそう映ったようだ。
「慌てた柴田大は4コーナーですっかり脚を使わされる羽目になっちゃった
もんな」マスターはウォーブルが楽に逃げることが出来なかった原因を
ちゃんと見ていた。

「クビ−クビ−アタマ」という大混戦のゴール前だった。
大野は上がり33.7秒の脚を使って一番外を見事な追い込みを決めてゴールした。
勝春は残り400mで柴田大を交わしてゴール直前までトップを守った。
戸崎は勝春を追って残り300mから動き200mの右ムチ2発でクビ差まで迫った。
デムーロは残り200mで前に出来た隙間を右ムチ3発で縫って出ようとした。

「最後のあの着差は手前を代えるタイミングの差で決まったな」
オレは長芋の塩焼きをサクサク言わせて食べながらそう説明した。
府中は左回りコースだから、最後のコーナーは左手前で回ってくる。
勝ったアモーレは右手前であそこまで追い上げて50m手前で左に代えてゴール板を
駆け抜けた。
ビルズはそのまま左手前で坂を登って右手前に代えたのはゴール50m手前だった。
ミストはコーナーを回って右手前に代えて100m手前で左に代えて走った。
そして、ムーンはコーナーを回って右手前に代えて200m手前で左に代えて走った。
大体の馬は左利きで手前が左のときに走りやすいようだ。

「一番効率良く手前を代えてスピードを生かした大野が勝ったって訳さ」
ジャックダニエルをチビリとやる。
「あれって騎手が自由に代えることが出来る訳?」ケンちゃんの質問だ。
「あんだけスピードに乗ったときには無理じゃないかな」オレの意見だ。
「馬の感性で代える訳なんだろ」マスターは良い答えを持っていた。
「あんだけの大混戦になったら結果的に上手く代えられた馬が勝つという訳だ」
ケンちゃんはグラスのビールをゴクリの飲む。

「しかし、こんな大混戦になるレースだとは思わなかったぜ」
オレは再び苦虫を噛みしめたような顔になる。
「馬主が金子HDで、調教師が堀で、デムーロが乗ったら決まりでしょ、普通」
ケンちゃんも堅いと信じていた。
「何であの走りをフローラSでやらなかったのかな」
マスターが鋭い疑問を投げかけた。
「そう!それがカッチーのカッチーたる所以なんだな」
ケンちゃんが分かったような分からないような説明をする。
「あいつの頭の中は誰にも理解不能であるからな」
業界では有名な話なのである。

断トツの一番人気に支持されたハナレイムーンは4着に沈んだ。
しかし、デムーロは残り200mで柴田大と勝春の間に出来たスペースを見つけて
右ムチを振るって伸びて来た。一瞬、このまま抜けて勝つ、と思った。
しかし、その伸びは前の勝春を捕えるまでには至らなかった。
そしてゴール板では大野にも戸崎にも先を越されてしまった。
悔しい結果のレースとなった。

華子さんをふった彼を射止めたのは会社の同僚だったようだ。
田舎出の地味な女の子だという。名前は勝江。
「芋の煮っ転がしが上手で笑顔が可愛い娘らしいのよ」桃ちゃんはいつもの
ように生ビールを豪快に煽る。
「やっぱりカッチーか」ケンちゃんが吐き捨てるように言うと
「何よ、あんた知ってるの?」桃ちゃんは思わずケンちゃんの顔を覗く。
「カッチーは何をやらかすか分からないってコトっすよ」
ケンちゃんはグラスのビールを煽る。
「美女は3日で飽きるがブスは3日で慣れるって言うからな」
マスターがポツリと呟く。
「あっそれ、名言ね」桃ちゃんはケラケラと笑った。

カッチーに出し抜けを食らった華子さんとハナレイムーン
人間と馬との違いはあれ、それによって落ち込んだのは一緒だ。
これを糧に人間も馬も大いに羽ばたいて欲しい。

人生は難しい。競馬もまた難しい...ということのようだ。

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