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2017/05/13 23:30

スナック・パドック「ヴィクトリアマイル」レース前その4

「見たよ、見たよ、見つけたよ」ケンちゃんは大騒ぎだ。
「何だよ、騒がしいなぁ。つまんねぇ話だったら出入り禁止にするぞ!」
マスターは相変わらず口が悪い。
「フケの馬を見つけちゃったんですよ」ケンちゃんは少しドヤ顔だ。
「そうか、そうか、良くやった。それで、どうして、どうなった?」
マスターはどこかのラジオ番組をマネしている。
「JRAレーシングビュアーのパドック映像を見ていたんですよ。そしたら
京都競馬場の4レースにいたんですよ。フケ馬が」マスターは小さく頷く。
武豊が乗ってるので人気になってるかな?と期待したんだけど5番人気
だったので、あれ?っと思ったんだけど、みんな知ってるんだなと思った
訳ですよ」どうしても説明が長くなる。
「それで、それで...」マスターは結論が早く聞きたい。
「もちろん、それを外して買った訳だよな」オレは念を押す。
オフコース!その通りです。そして結果は...」少し引っ張る。
「早く言え!」マスターが怒り出す寸前だ。
「4着だったんですよ」ケンちゃんが結果を発表した。
「何だよ。もっとボロボロに負けたんじゃないのかよ」
マスターは少し落胆している。「半端だなぁ」
「そんなもんなの?」オレの顔を見る。オレは両手広げてお手上げポーズ。

「ねぇねぇ、そのレースで馬連とったんだけど、その話してもいい?」
ケンちゃんは恐る恐る切り出した。
「そうか、フケの馬を見つけて、それを切って馬券をとった、という手柄
話なんだもんな」マスターは話が分かる人だ。
「福永の馬が1番人気だったんだけどさ...」とケンちゃんは話し始めた。
すると「ちょっと待て、その話、どのくらい長くなる?」
マスターは仕込みの最中で、足りないものを買い付けに行かなければならない
らしい。「いいっすよ。どうせ俺の手柄話なんて聞きたくないだろうから」と
ケンちゃんは少しすねている。マスターは「悪い、悪い」と言って手を上げて
後ずさりをするように裏の扉から出て行った。店に残ったのはオレだけ。
「で?」ジャックダニエルをチビリとやる。
「マスターが帰って来たらまた話さなきゃなんないから後にするわ」
ケンちゃんはオレには結構冷たい。

「お前さぁ」マスターが帰って来るなりケンちゃんを怒る。
「出馬表みたら、その馬、牡馬じゃねぇかよ」マスターは呆れている。
「えっ、あれっ、そう?」ケンちゃんは慌ててスマホで調べる。
「きのう店に来た時、笑いが止まらないほど自分でウケてた話だろうが」
マスターはバカなヤツだと言って大笑いした話だ。
「何であの時は気が付いて、今度は気が付かないのか...」
マスターはバカは無限だと言って前以上に腹を抱えて笑っている。
「あっ本当だ。何で気が付かなかったんだろう?」
ケンちゃんはかなり罰が悪そうな顔をした。
「だってさ、尻尾を柔らかく振ってるだけじゃなくてさ、何か白い液体が尻尾
に付いてたんだよ。てっきりそれがそれだと思ってさ」
ケンちゃんは身振り手振りを加えて説明をする。
「お前が観察できないのは人間の牝だけかと思ったら馬の牝もダメだってこと
がよ〜く分かっただろ」マスターは人差し指を何度もケンちゃんに向ける。
「だって男と女を見分けるという基本が分かってないんだからな」
マスターは吐き捨てるようにそう言った。
「その件に関しては何の言い訳もできないっす」とケンちゃんは下を向く。

そんな話の流れでケンちゃんが馬券をゲットした件はどこかへ飛んで行ってしまった。
ケンちゃんは「儲かったので焼肉でも食べに行こうよ」と提案する予定だった。
それがフケの見分け方が問題で消えて無くなってしまった。
正にフケば飛ぶような話とはこのコトなのだろう。

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