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2017/06/11 20:39
スナック・パドック「マーメイドS」レース後・その1
「熱いなぁ、あそこまで追ったんだから抜けてくれよ〜!」ケンちゃんはワイド馬券がとれなかった。
「いやぁ、惜しかったな」オレもキンショーユキヒメが外から追い込んで来たときは力が入った。
「来てれば4ケタ配当は間違いなかったでしょ」ケンちゃんはそう言ってグラスのビールを煽った。
「マキシマムドパリはいいレースをしたな」オレはいつになく前目での競馬に驚いている。
「いい判断っすよね」ケンちゃんは藤岡佑騎手の好騎乗を褒めた。
「パドックから動きが軽快だったからな」オレは元気一杯の姿を見て新聞に〇印を書いていた。
「これからは芦毛馬の季節ですからね」ケンちゃんは毛色による太陽光の反射を語る。
「それは一理あるよな。黒い馬は太陽光が染み込む感じがするもんな」
オレもケンちゃんの説明には納得した。
「あれっ?きょうのマスターはおとなしいっすね」ケンちゃんはニヤニヤしながらマスターの顔を覗く。
「・・・・・」
「トーセンビクトリー以外は馬じゃねぇとか何とか言っちゃったせい?」ケンちゃんが突っ込む。
「・・・・・」
「時には馬もロバに負けることだってあるさ」オレはジャックダニエルをチビリとやる。
「ハツガツオは何着だったの?」桃ちゃんはレースを見ていない。
「6着っすよ。最低人気だったから大健闘でしょう」ケンちゃんはスマホの画面を見せている。
「やるじゃない、ハツガツオ」桃ちゃんは喜んでいる。
「マスター、きょうもカツオあるの?」カツオのマリネが気に入ったようだ。
「あるよ。作ろうか?」マスターは早速冷蔵庫を開けて中から紙に包んだカツオを出した。
「今の時期にフィリピン沖から黒潮に乗って北上して来るのが初ガツオで、さらに北に進んで三陸沖で
水温が冷たくなるとユーターンして南下して来るのが戻りガツオってことになるんだな」
マスターはウンチクを披露しながら調理に入った。
「マリネって漬け込むんじゃないの?」桃ちゃんは少々興味があるようだ。
「いやいや、この時期はサラダ感覚で食べた方が美味しいよ」マスターの包丁捌きに見入ってしまう。
「この新玉ねぎじゃないと、このマリネは完成しないからね」
真っ白な姿の玉ねぎを見せて「こいつの甘さが生きるんだね」そう言ってサクサクと包丁を入れる。
「モドリガツオって馬、いないの?」桃ちゃんは馬の話題に戻す。
「聞いたことないなぁ」ケンちゃんはスマホで検索を始める。いない。
「昔、マチカネフクキタルって菊花賞馬がいたけど、セットでマチカネワラウカドってのがいたな」
オレは古い情報はお手の物だ。
「へぇ〜!さすがにマチカネ、名前は凝ってるよね」ケンちゃんもマチカネは知っていた。
「でもさぁ、笑う門には福来る、だからニワが足りないわよね」桃ちゃんは鋭い。
「マチカネニワって馬がいて始めてことわざが成立するって訳か、なるほど」オレは感心しきりだ。
「ハツガツオの馬主に電話してモドリガツオって名前も付けてセットにしなさいっていいなさいよ」
桃ちゃんはケンちゃんにそう指示した。
「えっ!俺が?じゃぁついでにマリネって馬名も付けてもらっちゃいますかね」
そう言ってケンちゃんはトイレに逃げた。話が変な方向に進まない予防策である。
「来週から函館が始まって夏競馬に突入だな」オレがシミジミそう言うと
「宝塚記念が終わればもうすっかり夏競馬だよ」マスターも感慨深げである。
「もう2歳馬が函館で調教して夏に備えてるもんね」ケンちゃんはスマホで情報を掴んでいる。
「今年も海水浴を兼ねて新潟に行こうよ」ケンちゃんは5年前のことを思い出してる。
「海水浴を兼ねて...ってどういうコトよ」桃ちゃんは内容がつかめない。
「新潟競馬場へ行くことがメインでついでに海水浴をするってコトっすよ」
ケンちゃんが分かりやすく説明すると、桃ちゃんは凄く喜んだ。
「行く、行く、わたしも行く!連れてってよ」桃ちゃんがはしゃぎ始めた。
「えっ?桃さんも行くの?」ケンちゃんのトーンが少し下がった。
「あれっ?不満なの?」桃ちゃんはケンちゃんの顔に突き刺さるのではないかと思う程、人差し指を
伸ばした。「前回は男ばっかりで行ったから...」ケンちゃんは少し言葉に詰まった。
「行きたい!海も競馬場も行きたい!」桃ちゃんは両手広げて喜びを表現した。
「よし!決まった。今年の夏は新潟ね」桃ちゃんはもうその気である。