590件のひとこと日記があります。
2017/08/09 18:06
スナック・パドック 「関屋記念」レース前・その1
「関谷記念だな」マスターがポツリと呟いた。
「いただきますよ、芦毛馬で」ケンちゃんは気合が入っている。
「ダノンプラチナか?」マスターはスマホで登録馬を見ている。
「そうですよ、それしかいないでしょ芦毛馬は」ケンちゃんはスマホの画面を指で叩きながらそう言う。
「関屋記念を勝った芦毛馬なんているのか?」マスターは記憶を辿っても思い浮かばない。
「だからいいんじゃないの。記録は破られるためにあるんですよ」ケンちゃんは胸を張る。
「何言ってんだ?。言ってる意味が分かってんのか、おい?」マスターはケンちゃんに突っ込みを入れる。
「来てないから来るんでしょ。来るんだから来てないんでしょ」ケンちゃんはグラスのビールを煽る。
「面白いじゃないか、ダノンプラチナ」オレも興味はあった。
「ウインガニオンの四連勝は難しそうだし、メートルダールの飛び石勝ちは負けの番だしね」
ケンちゃんの下調べは結構鋭い。勝てない要因を探させたら天下一品である。
「でも関屋記念は堅いレースで有名だからな」マスターはお気に入りのレースのひとつである。
「だから今年は荒れる確率が高いんですよ」ケンちゃんは自信満々である。
※「ダノンプラチナの戦績」スナック・パドック「関屋記念」レース前・その2参照
「おいおい、そんな虚弱体質の馬に期待して大丈夫か?」マスターは心配顔だ。
「サラブレッドというのはケガと共存する生き物なんですよ」ケンちゃんは真顔で答えた。
「挫跖(ザセキ)ってのは脚の裏が痛いらしいからサラブレッドとしてはキツイんじゃないか」
オレは子供の頃に裸足で画鋲を踏んだことを思い出している。あれは痛い。
「3年前の2歳王者だからね。格が違うんすよ、格が」ケンちゃんが拳を握って強調する。
「クラリティスカイは一昨年のNHKマイルC馬だぞ」マスターは記憶を辿っている。
「逃げたい馬が何頭かいるから末脚勝負となればプラチナの目は確かにあるよな」
オレは展開から考えれば十分あり得ると思っている。
「とにかく夏場に強い芦毛馬に期待しましょうよ。よろしくお願いしますよ」
ケンちゃんはいつに無い低姿勢で頭を下げたりした。それを見たマスターは
「おいおい、どういう風の吹き回しだ?何かあったのか?」と突っ込む。
「いやいや、芦毛馬を応援することで皆さんにも喜んでもらいたいんですよ」
ここのところ芦毛馬絡みの馬券で少し潤っているものだからそんなセリフが飛び出したのだ。
「ダノンプラチナのパドックを見てると後脚の踏み込みに特長があるよな」
オレは前脚の送りのリズムと後脚の送りのリズムが合っていないように見える。
「うんうん、なるほどな。こりゃあ痛いのは後ろ脚だな」マスターはすぐにスマホで映像を確認している。
「どっちが痛い、なんて関係ないんっすよ。レースに出たら痛さを忘れて無心で走ってもらわないとね」
ケンちゃんの言うことはもっともな話でオレたちにはそれが分かったってどうすることも出来ないのだ。
「俺は見送るよ。そんな脚が痛くて困っている馬なんて買えないぞ」マスターらしい判断だ。
「あぁ、こうやって馬券を外すんっすよね。可哀そうな人だよ」ケンちゃんは呆れ顔だ。
「あっお前、そこまで言うんだったら俺の買う馬券を保証しろよ」マスターはそう出た。
「あれっ?ベテラン馬券師がそんなことを言いますかね?プライドはどこへ行ったんすか?」
ケンちゃんは両手広げてお手上げポーズだ。マスターは痛いところを突かれて亀のように首をすくめた。
「馬券の押し売りはやめろよ。結局そういうやり取りになるんだからさ」オレは見かねてそう言った。
続けて「まっ調子の良いときは人に吹聴してでも予想を口外したくなるのも分かるけど、やり過ぎはダメ
だ。せっかく築いた人間関係が崩れるもとだぞ」とケンちゃんに釘を刺した。
ケンちゃんはすぐに納得してマスターと握手をして元のさやに収まった。良かった、良かった。
格上・ダノンプラチナが、新潟の長い直線の大外をグイグイ伸びて久しぶりの勝利を上げることに期待して
応援しましょう!ダノンプラチナを!
がんばれ!ダノンプラチナ!