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2017/08/18 12:16
スナック・パドック 「札幌記念」 レース前
「札幌記念といえば何かワクワクするな」マスターは胸の高まりが抑えられない。
「トウショウボーイとクライムカイザーが夏に激突したレースだからな」オレも胸が高鳴る思いがある。
「その年の皐月賞馬とダービー馬が出て来たんだからな」マスターのトーンは上がる。
「えっ!それって豪華ですね。今年でいえばアルアインとレイデオロが出て来たってことでしょ?」
ケンちゃんはさすがに驚きの表情が隠せない。
「そうさ。豪華なメンバーによるレースになった訳さ」マスターは腕を組んで神妙な顔になった。
「その二頭の前に立ちはだかったのがグレートセイカンという一歳年上のダート馬だったんだ」
オレも当時を思い出している。
「まだ札幌に芝コースが出来る前の話だからな」マスターは大切なポイントを補足した。
トウショウボーイは3歳の春にデビューして2着に3馬身差を付けて快勝。続く特別戦を2つとも4馬身差、
5馬身差と楽勝して皐月賞に駒を進めた。皐月賞では、関西馬の雄・テンポイント(デビューから5連勝)が
1番人気に支持され、ボーイは2番人気であった。レースは先行したボーイが直線で抜け出すとテンポイント
に5馬身差を付けての圧勝であった。このレースによってボーイには「天馬」の称号が付けられることになっ
た。続くダービーは単枠指定となり圧倒的人気となった。レースはしっかりと逃げを打つ馬がおらず、押し出
されるように早めに先頭に立つ展開となった。それでも余裕を持って最後のコーナーを回り直線で末脚を爆発
させて楽勝するかに見えたが、直線入口でベテラン・加賀武見騎手鞍上のクライムカイザーが馬体を寄せて、
ボーイに圧力をかけた。「進路妨害ではないのか」と思われるほどの斜向であったが、そこは名手・加賀騎手
の手綱さばきで制裁までには至らなかった。終わってみればボーイは1馬身半差の2着であった。そんな因縁
の2頭が休養先の北海道でレースに出走したのが1976年の札幌記念だった。1番人気はダービー2着のボーイ
、2番人気にはダート巧者・グレートセイカン、ダービー馬・クライムカイザーは3番人気だった。6万人と
いう大観衆を集めたこのレースはスタートから波乱が待っていた。ボーイが躓いて出遅れたのである。セイカ
ンは好スタートを切って逃げの手を打ち一人旅となる。そのペースを追走できず、カイザーは大きく遅れてし
まう。出遅れたボーイは中団でレースを進め、最後の直線では末脚を爆発させてグイグイとセイカンを追い詰
めた。ゴール板を通過するときには馬体を併せていた。しかし、首差届かずまたしても2着に終わった。
「今年のこのメンバーじゃ、物足りないな」マスターはそう言ってスポーツ誌の馬柱を眺めた。
「この秋に活躍するメンバーが集まったんすよ」ケンちゃんは期待に胸を膨らませている。
「芦毛馬がいるな」オレはケンちゃんの顔を見る。
「マウントロブソン、期待できますよ」ケンちゃんの笑顔が弾けた。
「この間の福島で久々に勝った馬だろ?」マスターはレースを記憶していた。
「随分と体重が増えていたけど走りには影響が無かったな」オレも記憶を辿っている。
「何せ去年の菊花賞(7着)以来のレースだったからね」ケンちゃんは柔らかい笑顔を作った。
「中心はヤマカツエースだろ」マスターは堅い中心馬が大好きだ。
「大阪杯は良く見えたな」オレはあの時のパドックの姿が忘れられない。
「それ以来ですからね。4か月半も開いてる」ケンちゃんは弱みを指摘する。
「ロブソンに二走ボケは無いのか?」マスターから鋭い質問が投げられた。
「無い無い。ロブソンはそんな馬じゃないっすよ」ケンちゃんは人差し指を横に振って否定した。
「そんな馬じゃない、ってどういうコトだ?」マスターは大いに疑問である。
「常にリラックスした走りで気負わないってコトっすよ」ケンちゃんは余裕で返す言葉を用意していた。
「そんな大物がここで主役じゃなくていいんか?」マスターは鋭いところを突く。
「このレースの後の大舞台で主役を務めますから大丈夫」きょうのケンちゃんは妙に自信がみなぎっている。
マウントロブソンの走りに、この秋、大きな活躍に期待がかかる。
モレイラ騎手を背に札幌のターフを見事な走りで駆け抜けて欲しい!