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2017/10/03 12:13
ユリシーズ
ユリシーズと聞くとわたしは寺山修司を真っ先に思い起こすのである。
寺山が馬主として唯一手に入れた馬である。船橋競馬場で走っていた。
父マサタカラ、母ベッシュン。
ユリシーズが凱旋門賞で3着になったという。
「船橋競馬に凱旋門賞なんてあったかい?」スシ屋の政が素朴な疑問を投げる。
「ユリシーズが走ったんだからあるんだろ」バーテンの万田がそう答えると、
「3着に入ったなんて凄いじゃない」と、トルコの桃ちゃんが嬉しそうに微笑む。
「アイルランドの作家が書いた小説なんだってさ」と万田がプチ情報を入れると、
「寺山さんらしいな。お気に入りだったんだろうよ」と政は鯛の昆布締めを一貫握る。
「どうせわたしなんかには分からない難しい小説なんでしょ」と桃ちゃんが口を尖らせる。
「いやいや、ユーモアたっぷりの楽しい小説らしいぜ」と万田はプチ情報を少し膨らませた。
寺山修司は、1972年にメジロムサシが凱旋門賞に挑戦したときには現地で観戦している。
もし、寺山が生きていたら、ユリシーズの応援のため、フランスに飛んだはずだ。
そして、レース結果を見届けて、
「オレのユリシーズが3着に入った〜!」とシャンティイ競馬場で叫んだことだろう。
満面の笑みで。