スマートフォン版へ

マイページ

590件のひとこと日記があります。

<< 芦毛を狙え! 2017年10月7日(土)・8日(... ひとこと日記一覧 スナック・パドック 「馬の利き脚」その2... >>

2017/10/11 08:40

スナック・パドック 「馬の利き脚」その1

「あれっ!どうしたんだ?」先客のケンちゃんの右腕がギブスで固まっているのを見たオレは驚いた。
「仕事中に滑って転んでこのザマっすよ」ケンちゃんは少し恥ずかしそうにそう説明した。
「それはそれは...、不便そうだな」ケンちゃんは右手がすっかり使えないので左手で箸を持っている。
「でも、右脳活性のためにはいいらしいぞ」オレはテレビの特番を見て知識を得ていた。
「こいつの頭は右脳も左脳も一緒だよ」マスターはそう言ってケンちゃんを茶化す。
「ケガした時くらいもっと丁寧に扱ってよ」ケンちゃんから不満が出た。

「馬にも利き脚ってのがあるんすかね」ケンちゃんから素朴な質問が出た。
「あるだろ。4本の脚がバラバラに動くんだからさ。ねぇ」マスターはオレに振る。
「大半の馬は左利きらしいな」オレはその情報は聞いて知っていた。
「へぇ〜、あるんだ。で、どう使い分けするんすか」ケンちゃんからさらなる質問が出る。
「コーナーを回るときは利き脚がどうあれ脚の使い方は決まっちゃうんだ」とオレは話に熱が入る。

馬が左回りのコーナーを回るときには、左脚が前に出る「左手前」という動作で走る。右回りのコーナーを回る
ときには、逆の「右手前」という動作で走る。馬は基本、走っていて脚が疲れると手前を代えて、脚の負担を軽
くしようとする。左利きだからといって左手前ばかりで走っていたのでは、脚の疲労は偏ったものになり、走る
バランスを保つことは出来ない。そこで大半の馬は「左利き」というデータを基に考えると、中山競馬場のよう
な右回りでしかも直線が短いコースが左利きの競走馬にとっては理想的なコースということになる。3コーナー
から4コーナーにかけて「右手前」で走らなければならない馬たちは、コーナーを回り終えるとすぐに手前を自
分得意の「左手前」代えて、最後の直線を走る。コーナーを「右手前」で走って来て右脚が疲労しているのだか
ら、「左手前」に代えて直線を走るというのは「左利き」の馬にとっては願っても無い流れなのである。そして
、直線が短ければ「左手前」のままゴールを迎えることになり、何のストレスも発症しないスッキリとしたレー
スが行えるのである。

「左利きの馬が府中を走るのは大変な訳だ」マスターは察しが良い。その通りである。
「利き脚がどっちかが分かれば、レースの予想なんて簡単じゃないっすか」ケンちゃんの目がキラリと光った。
ケガをしても短絡癖は治らない。すぐにもう全てをつかんだ気になってしまう。
「府中は左回りだし直線も長いから確かに大半の馬にとっては苦労する競馬場だろうな」
オレはその話がしたくてウズウズしていた。

馬が左回りコースの最後のコーナーを「左手前」で回って来て直線に向かうとどうするかである。「右利き」の
馬は「あぁ疲れた」と言いながらすぐに「右手前」に代えて直線を走り出す。この手前の入替によって脚の疲労
度は軽減される。「左利き」の馬を見ていると、多くは手前を代えずに利き脚の「左手前」のまま直線を走る。
がしかし、利き脚とは言え疲労は増す。そこで、長い直線の府中では途中で堪らず手前を代えることになる。不
得意の利き脚で走るのは納得がいかない。しかし、競走馬であるからゴールを目指さなければならない。そして、
容赦のない騎手のムチが飛ぶ。「速く走らなければ」との思いからゴール前でさらに手前を得意の「左手前」に
代えて走ることになるのである。このケースが多いように見受ける。しかし、手前を代えられない左利きは、長
い直線で脚の疲労が限界を超えバッタリとスピードが落ちてしまい、ズルズルと後退して惨めなレース結果が待
っているということになる。

「そうかぁ、そんなコトが競馬場では起きている訳っすね」ケンちゃんは興味津々だ。
「お前は本来右利きなんだから、右へ右へ曲がって歩いた方がいいぞ」マスターはケンちゃんに忠告する。
「それじゃぁ行きたいトコへ行けないじゃないっすか」ケンちゃんは納得がいかない。
「いいんだよ。お前は基本自由過ぎてダメなんだからさ」マスターはケンちゃんの痛いところを突く。

とにかく人生も巧く手前を代えて進んで行けたら最高なのだが...。

お気に入り一括登録
  • バラン
  • スピード

いいね! ファイト!