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2017/10/26 15:03
スナック・パドック 「天皇賞・秋」 レース前・その1
「あれっ?オグリキャップは『天皇賞・秋』を勝って無いのかい?」マスターは驚きの声を上げる。
「3回走って、2着→2着→6着っすね」ケンちゃんはスマホの画面を見ながら説明する。
「3回とも1番人気だけどな」オレはこの3回をしっかりと覚えている。
「タマモクロスに負けたときも1番人気だった?」マスターは記憶を辿っている。
3歳(当時は4歳表記)春に中央入りして快進撃の6連勝。「芦毛の怪物」と呼ばれた。前走の毎日王冠(東京・
芝1800m)では、ダービー馬・シリウスシンボリやダイナアクトレスなどの古豪をあっさり負かしている。そし
て、7連勝を目指して1988年天皇賞・秋に臨んだ。しかし、このレースには同じ芦毛のタマモクロス(牡4)が
「白い稲妻」と呼ばれ芦毛の頂点の名を賭けて立ちふさがった。タマモクロスは1年前から7連勝中でこちら
も破竹の勢いがあった。前走の宝塚記念(阪神・芝2200m)では、前年の天皇賞・秋の覇者、ニッポーテイオー
(牡5)を差し切りで破っていた。がしかし、宝塚から4が月半、少し間が空いたのと元々カイ食いが細いと言
われていて体調維持に問題があるとの見方がスポーツ誌の競馬爛を賑わしていた。そして、レース当日のオッ
ズは、オグリが2.1倍で1番人気、タマモクロスは2.6倍で古馬最強馬としてのプライドに傷を付けられた形と
なった。レースは予想通りレジェントテイオーが逃げる展開で始まった。驚いたのはタマモクロスが2番手集
団に付けて前でレースを進めたことだった。鞍上の南井騎手が馬の行く気に任せる形をとったものと思われる
がオグリの鋭い末脚を考えると、この判断はどう出るのか注目を浴びる展開になった。オグリキャップ(河内)
はと言うといつもの通り中団の後ろにしっかりとポジションを取り前を虎視眈々と前を伺っている。最終コー
ナーを回って直線に向くとタマモクロスは早めに仕掛けて残り200mで先頭に立つ。そこへオグリが外からグイ
グイと末脚を伸ばして来る。その差は詰まるがタマモクロスも伸びる。オグリは最後まで馬体を合わすことが
出来ず身体一つの差でゴール板を通過した。中央入りして初めての敗北を味わうこととなった。
「あのレースは力が入ったよ」オレはテレビ観戦だったが最後の直線の2頭の叩き合いは目に焼き付いている。
「芦毛2頭の対決になったか、タマモクロス逃げる、オグリキャップが追い詰める。タマモクロス逃げる、タ
マモクロス逃げる、タマモクロス先頭、ゴールイン!」オレがテレビ中継を再現する。
「あぁ、その場に居たかったっす」芦毛党総裁・ケンちゃんは大いに悔しがる。
「その3年後も芦毛馬2頭のワンツーフィニッシュのハズだったんだぜ」オレは少し勿体ぶらせてそう言う。
「あぁあれな、あれはショックだったな」マスターはそのレースに思い出が満載だと言う。
「何すか、あれって?」ケンちゃんは皆目見当が付かない。
「芦毛のメジロマックイーン(牡4)がスタート直後の斜向で失格になったんだよ」オレはそう説明する。
「審議が長かったなぁ、あの時は」マスターは当時のイライラ状態が蘇っているようだ。
「検量室で武豊が憮然として部屋を出て行く姿がテレビに映ったあとに確定したんだよな」とオレ。
「審議ランプが消えて掲示板の5頭の到着順が入れ替わる瞬間の映像が忘れられないなぁ」とマスター。
「そして繰り上がりで優勝となったのが芦毛のプレクラスニー(牡4)だったんだ」とオレが補足すると
「なるほど、幻の芦毛馬ワンツーフィニッシュだったって訳っすね」ケンちゃんは合点がいった。
「今年は芦毛馬がいなくて寂しいっすよ」ケンちゃんは山崎12年のロックをチビリとやる。
「短距離に凄いのがいるけど中長距離は手薄じゃないのか?」マスターは芦毛の未来を心配する。
「いるじゃないっすか」ケンちゃんはそう言ってポポカテペトルと書かれたボトルのタグを触る。
「あっ!いたな。いたけど、雨が降らないとダメなんじゃないのか?」とマスターは鋭い。
「和田が他の馬はあの馬場でノメってたけどポポは引っ掛かってたって言ってたからな」オレは凄いと思った。
「♪雨雨降れ降れポポちゃんが〜♪」とケンちゃんは歌い出す。
「今年は土砂降りの有馬記念となりました。さぁ最後の直線、坂を最初に登るのはポポです。ポポ強い!ポポ
優勝〜〜!なんてな」とレンゲをマイク代わりにしてオレが実況中継をやる。
「それ、それっすよ。そうなったら嬉しいなぁ」ケンちゃんは両手合わせてお祈りポーズである。
「話がそれたぞ〜」とマスター。「そりゃ失礼。悪し(芦)からず」とケンちゃん。チャン、チャン。