590件のひとこと日記があります。
2017/11/26 09:51
スナック・パドック 「京都2歳S」 レース後
「グレイルが抑える作戦に出たな」マスターは意外な展開に少し驚いた表情を浮かべた。
「タイムフライヤーが内で行く気を見せたから抑えたんだろ」オレは流れを読んだ武豊の咄嗟の判断と見た。
「Cデムーロが強い馬は強い勝ち方で勝つ、って乗り方をしたからな」マスターはフライヤーの積極性を褒める
「そしたらもっと強い馬が後ろにいたってコトだろ」オレは積極性だけでは勝てない事を知っている。
「実力が同じだったら追う方が有利っす」ケンちゃんは目標がある後ろに分があると言う。
「武豊は自信があったんだろうな」マスターは堂々とした作戦を評価している。
「喰らい付いて行って、そして最後は交わしたんだから褒めるしかないだろ」オレもそれは評価せざるを得ない
「武豊が最初のコーナーの手前で、タイムフライヤーを先に行かせてその後ろに付けようと進路を内に代えた時
に、後ろの岩田の馬に迷惑を掛けていたっす」ケンちゃんは進路妨害で失格じゃないか、と言うのである。
「右後方を確認しないでスッと内に切れ込んだからな」オレはあれでは後ろの馬は堪らないと思った。
「バックミラーが付いてるんだったらいざ知らず、前しか見ないであの切れ込み方はないっす」とケンちゃん。
「どうも最近の武豊は問題が多いな」オレは週刊誌を賑わした影響が至る所に出ている気がするのである。
「まぁまぁそんな怒るなよ。さっきまでは褒めてたんだし...」マスターは明日のコトがあるので加減をする
「明日だって何かやらかすんじゃないっすか」ケンちゃんはかなり手厳しい。
「明日は勝つことが決まってるんだから何も無いに決まってるだろ」マスターにはまったくブレが無い。
上記のように最初のコーナーを迎える少し前に進路の選択でグレイルに変な動きがあったが、あれを除くと概ね
順調な流れのレースだった。3番手を進むフライヤーは折り合ってスムーズな動きで順調にレースを進めていた
し、グレイルはその2馬身後方をこちらもしっかりと折り合ってリラックスした走りでフライヤーを前に見なが
ら歩を進めていた。先に動いたのはフライヤーだった。最後のコーナーを回って直線に向いた時にスパートを掛
けて残り150m地点で先頭に立った。そして、Cデムーロの左ムチが飛んでゴール目指してグイグイと脚を伸ば
した。左後ろからグレイルが伸びて来たことが分かると右にムチを持ち替えて最後の一発が飛んだ。グレイルと
いえばフライヤーが掛けたスパートをしっかり見ていてすぐに反応していっしょにスピードを上げて追走した。
フライヤーが先頭に立った時にはグレイルは1馬身差に詰め寄っていた。コース取りもフライヤーの外を選択し
て圧力を掛けることを忘れていなかった。武豊の厳しい右ムチが大きくしなってグレイルに檄を飛ばす。それに
すぐさま反応してグレイルの脚は鋭く伸びた。身体が合わさったのがゴール直前であったが頭差抜けていたのに
は驚いた。それは最後にグレイルが魅せた伸び脚に素晴らしいものがあったことの証明であった。
「最後の追い比べの武豊は迫力があったな」オレはあの時の武豊には緩さを感じなかった。
「褒めたりけなしたり、忙しいヤツだなぁ」マスターは半ば呆れ顔である。
「俺もあの時の武豊には"男"を感じたっす」ケンちゃんも見るところは見ている。
「グレイルがこういう競馬が出来るってコトは先々が大いに楽しみだな」オレはこの2連勝の大きさを語る。
「母系に距離の不安はあるけど何とかダービーは大丈夫だろ」マスターは血統面から評価した。
「クラシックの脚音が聞こえて来るっす」ケンちゃんは目を瞑って耳を澄ませる。
「クラシックの脚音ってどんな音だよ」マスターは妙な突っ込み方をする。
「幼稚園児のスキップって感じっすかね」難しい質問にすんなり答えるケンちゃん。
「ん?」マスターは返答に詰まる。「いい感じだ」オレは拍手をしてケンちゃんを褒める。
今の時点で「芝2000m」を勝った意味がどこにあるのか?その答えは来年の春まで持ち越しである。
有力馬の一頭・ワグネリアン(牡2・友道厩舎)は弥生賞(中山・芝2000m)に標準を合わせたと聞く。
ダービーを早く意識しようと思えば共同通信杯(東京・芝1800m)からのスタートがベストだと思うがどうだろう
「問題は武豊っすね」とケンちゃんはあくまでもそこに拘る。
名騎手の称号が「迷騎手」の肩書に変わりつつある現状をどう克服するのか?
そこが問題であるとスナック・パドックの辛口評論家たちは注目しているのである。