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2021/10/29 17:34
スナック・パドック「天皇賞・秋」その2
そこへペンキ屋の留さんがスポーツ新聞を片手に店に入って来た。
留「コントレイルでいいんだろ、マスター」
マスター「いいでしょ、それで・・・」
ニシ「府中の二千は何かがあるって言ってたばかりなんすよ、ねっ」と、オレの方を見た。
オレ「いやいや、いいんじゃないんですか、それで・・・」
ニシ「あれあれっいいのそれで」
マスター「頭は鉄板さ」
留「そのあとがアルミだから困るんだよ」
ニシ「アルミ・・・って・・・銀とか胴じゃないんすか」
マスター「エフは3歳で・・・グランは牝馬で・・・って心配なんだよな」
オレ「相手は友道厩舎でいいんじゃないのか」
留「そこだよ、そこ。狙いはそこ」
マスター「やっぱそこかぁ。そうなると手が広がるんだよ」
ニシ「マスターはコントの単勝一本で行けばいいんすよ」
留「そうそう、マスターはそれでいい」
マスター「そんなこと言うなよ。きょうび、馬券の種類がこれだけあって上手く選べば即万馬券という時代に鉄板単勝一点勝負は夢がないぜ」
ニシ「結果ですよ、結果。すべては結果が当たったか、ハズレたか・・・金になるか、オケラか・・・」両手広げてお手上げポーズ。
留「お前の愚痴は実に暗い。楽しめるレースを前にしてそんなにネガティブなヤツは去れこの店から去れ」ドアを腕で示して出て行けポーズ。
ニシ「分かったよ、分かった。帰りゃぁいいんでしょ」千円札3枚をカウンターに置いて立ち上がる。
マスター「足りねぇぞ」腕組みをして口を尖らせる。
ニシ「えっ冗談でしょ」不満顔だ。
留「暗いし足りねぇし・・・あとは俺が面倒みるからいい・・・兎に角、帰れハウス」指先がドアを示す。バタン勢いよくドアが閉まる。
若いニシちゃんが帰った店はおっさん三人が首を揃えて天皇賞秋の昔話に花が咲いた。今年の天皇賞秋は過去のどの天皇賞秋に近いのか、そしてどの馬が頂点に立つのか・・・。話は尽きない。そんな重い雰囲気が店の外まで伝わったのか店を訪れる客はマスターが看板を片付けるまで一人も来ることは無かった。そんな寂しいパドックだが店内は何十人もの客が来たのではないか、と思わせるほどボトルは転がり、炭酸水の空き瓶は転がっている。
留「枠順が決まる明日はまともな予想をしようぜ」
マスター「留そんな素人みたいなこと言ってると出禁にするぞ」
オレ「この無駄話みたいな話の中にこそ大いなるヒントが隠されているのだぞ」
さぁ、東京で続くビッグレースの始まりに幸先良いスタートが切れるのかどうか・・・お楽しみである。