592件のひとこと日記があります。
2021/12/03 14:35
スナック・パドック「チャンピオンC」その2
ニシ「1枠1番っす」
マスター「白馬が白い帽子をかぶるんだからファッション的に決まったな」
留「準備は整ったな」
ニシ「調教の動きはどうだったんすか?」
オレ「問題なし!だな。行ける!ダートも左回りも・・・問題なし!」
ソダシの今回の最終追い切りは、いつものように栗東・坂路コースで行われた。重馬場にもかかわらず「51.8―11.8」という時計を計測した。一週前が同じ栗東・坂路コース(良)で「51.1―11.9」だから順調な調整が行われていると判断出来る。この馬のフットワークは軽快でリズミカルな脚捌きが見ていて楽しい。坂路コースでは顎を上げてアップアップして走る馬が多い中、ソダシはグッと顎を引きパワーを無駄に使わないエコノミックアニマルなのである。圧巻だったのはその前の週(11/17)の調教だった。栗東のBコース(ダート)での調教だった。2頭併せだった。最後のコーナーに僚馬を内から追いかける形で入って並びながら回って直線に向いて、左手前に替えるとスピードに乗りアッという間に抜き去った。その時のソダシのフットワークは素晴らしかった。水たまりの上を走るアメンボのように水面をスイスイと軽やかに進む如く、砂の上を力まずスイスイと走ったのである。白毛を風になびかせながら砂上をリズミカルに走りスピードに乗った姿は"N700系新幹線"を思わすほどの迫力を感じたのだった。
オレ「なんたってあの札幌記念を勝った実力馬なんだからな」
マスター「秋華賞は無かったことにしてやるか」
留「忘れてやるか」
パドックの入口扉がゆっくり開いて、妙齢の女性登場だ。なんと真っ白なロングコートをひらめかせながらの入場である。
チエ「似合う?さっきブティックで買ったばかりなのよ」
マスター「似合うなんてもんじゃないよ、マダム・・・ブラボー!」
留「近寄り難いぜ」
ニシ「汚しちゃいそうっす」
マスター「お前は須貝調教師か」
ロングコートを衣文掛けに吊るしてカウンターに座ったチエちゃん。マスターが差し出した生中のジョッキの取っ手を捉まえて勢い良く口に運ぶ。ゴクゴクゴク!一気にジョッキの半分は食道を通って行った。「カァ〜!これよ、このために生きてるのよ」口に付いた泡を左手親指付け根でナビって溜飲の快感を味わっている。
チエ「ソダシちゃんで間違いないわよね」
マスター「今、その確認をみんなでしていたトコさ」
ニシ「大丈夫っす・・・頭は決まりっす」
オレ「皆が甘く見て軽視してくれればコッチのもんだな」
チエ「あんな荒くれ者集団の中に入って堂々と戦うんだから凄いわ」
マスター「そうさ、元HKTの指原がド派手なハードロックグループに入って歌うようなもんだからな」
ニシ「指原ならやれそうっすけどね」
留「例えが悪いんだよ。レスリングの吉田沙保里が相撲部屋に入門するようなもの・・・ってのはどうだ?」
ニシ「それもやれそうっす」
チエ「ゲート入りを最初にやらされるらしいわね」
オレ「秋華賞でゴネたからな」
ニシ「内枠ほどゲートの開く音が大きいんすかねぇ」
チエ「どういうことよ」
ニシ「だってゲートが開いた瞬間に内枠の馬ほど飛び上がったり横に飛び出したりしてるっすよ」
チエ「あらっ、それって問題じゃない?」
マスター「そりゃぁ大きな減点材料だぞ」
留「折角予想がまとまりかけてるってのに・・・ニシ!・・・お前ってヤツは」拳を握って拳骨を作っている留さん。
ニシ「ひぇ〜」首をすくめてカウンターの隅っこに移動した。
今夜のスナック・パドックは長い夜になりそうである。
留「マスター、ホワイトをロックでくれ!」
チエ「わたしも」
マスター「おでんをどうぞ。大根にハンペンにちくわぶ・・・全部"白"で揃えたんだ」
チエ「やるわね」
マスター「スープが美味いだろ」
チエ「出汁って言ってよ」
マスター「そ、ダシ」
お後がよろしいようで・・・