592件のひとこと日記があります。
2021/12/07 14:35
スナック・パドック「チャンピオンC」終えて
ニシ「言葉が無いっす」
オレ「こんな虚しさは久しぶりだな」
留「ニシ!お前ズボンが黒いぞ」
ニシ「ソダシが負けたんだから何でもいいでしょ」
マスター「そういうお前だって上下作業服じゃねぇかよ」
オレ「もし勝ってたら白いズボン買わなきゃなんないとこだったよ」
ニシ「ソダシは俺たちに面倒掛けないために負けたんすよ」
留「バカ野郎!勝ってたらズボンが何十本も買えたんだよ」
今回のソダシのゲート入りはスムーズに行った。少し待たされたがゲート内では何も無くスタートは少し沈み込むような形になったが真っ直ぐに出た。二の脚もしっかり使えてすぐにハナを奪った。1コーナーでは自分の好きなポジションが選べる理想的なレース展開となった。向こう正面では仕掛けて来る相手も無く、ゆったりとしたマイペースで進んでいるように見えた。勝負所の3コーナーから4コーナーを回るときも余裕すら感じさせていた。それが、4コーナーを回り終える手前で武豊・インティが外から並び掛けたて来た時、脚を伸ばせないソダシがいた。先に行かせて差し返すケイバなんて出来ないだろ、ここは何としてでも脚を伸ばさないと大変なコトになるぞ!しかし、ソダシの脚の回転は速まらない、ソダシの馬体は後ろから来た馬たちに飲み込まれて行く。おい!ソダシ、ウソだろ、冗談だろ・・・だってお前の持っている能力はそんなモンじゃないだろ、何で本気を出さないんだよ、何でここでレースをやめちゃうんだよ。いくら叫んだところでソダシには届かない。届いたとしてもソダシの耳には入らない。それほどソダシの頭の中は真っ白になってしまった。そうなったらもうケイバにならない。万事休すである。出来ればゲートを出たら右手前で走ってもらいたかった。左回りコースだから1コーナーから2コーナーにかけてのスパイラルカーブは自然と左手前で走ることになる。結局、スタートしてから2コーナーが終わるまでの600mは左手前だけで走ったことになる。左脚の疲労はいかばかりだったか・・・。
マスター「鱈の白子だ。みんなで食ってくれ」
ニシ「ありがたいっす。大好物なんすよ」
オレ「この甘み、堪らないな」
留「勝ってこれを食ってたら何百倍も美味かっただろうな」
マスター「それを言うなよ・・・そして鯛の煮物だ・・・どうぞ」
オレ「豪華なツマミが揃ったな」
マスター「煮魚じゃなくて焼いて食おうと思ってたけど、負けたから醤油で汚しちゃったよ」
ニシ「悲しいっす」
留「涙で食えねぇよ」
オレ「祝勝会が残念会になっちゃったな」
マスター「こういうこともあるさ・・・落ち込んでる面子が揃ったところでパーッと残念会やろうぜ!パーッと」
マスターの声が掛かって本日のスナック・パドックは暗さの中に明るさが見え隠れする微妙な店内となった。途中で、どこで飲んで来たのかヘベレケになったチエちゃんが白いロングコートの裾を真っ黒にして店の扉を開けて入って来た。いきなりカウンターにうつ伏せになったと思ったら「わたしに何をしろって言うの・・・ソダシ・・・」そう呟いて深い眠りに入って行った。チエちゃんの夢の中ではソダシが直線の砂の上を藻掻き苦しんでいる姿がグルグル回っているのかも知れない。もういいんだ、もう終わったんだよソダシ。厩舎に戻ってゆっくり休むといいよ。明日がある、明日があるんだから・・・。