スナック・パドック「2023ヴィクトリアマイル」その５・レース後

オレ「戸崎も巧いな」
ガミ「アタマ差付いたんすね」
マスター「直線でルメールが外へ進路を変えた時は『行ける！』と思ったけどな」
オレ「いつもより前でケイバした分溜まってなかったな末脚が・・・」
マスター「最後の４コーナーを３番手で回ったからな」
ガミ「しかも最内を」
オレ「ソダシとアースの枠順が逆だったら全然違った展開が見られたな」
マスター「アースらしく無かったもんな」
ガミ「ソダシは頑張ったっす」
オレ「晴れてたら勝ってたんじゃないか？」

バタン！カランコロン！店のドアが勢い良く開いて鐘の音といっしょにフクちゃん登場である。

フク「おいおい熱いなぁ・・・アチッチだぜ」
ガミ「ソングラインは買えたっすか？」
フク「ヒモだよ、ヒモ・・・」
マスター「そりゃぁ熱いな、アタマ差だけに頭にくるってか？」
オレ「まっソダシが交わされたんじゃ仕方ないな」
フク「まったく競馬の神様は容赦ねぇな」
ガミ「神様は情けの欠片も分けてくれないっす」
オレ「欲の皮が突っ張ってるアンタたちには微笑まない訳だよ」
フク「アンタもな・・・」

今年のヴィクトリアマイルで微笑んだ者はここにはいない。ソダシが差されてアースが伸びないのでは仕方がない。マスターはいつものように単勝一点張りで勝負したが、あまりにみんながソダシを押すのでいつもよりかなり控えて張ったようだ。「ありがとう」と心の中でお礼を言ってマイクを持ってみんなの前に立った。♪こぼれかけの　水の中にある〜♪羅針盤のソングラインを歌い始めた。「知らねぇぞ、そんな曲」フクちゃんは機嫌が悪い。マスターはお構いなしに歌を続ける。初めて耳にするメロディーを聴きながら三人はゴール前で必死に走るソダシの顔を思い浮かべている。『頑張ったなソダシ！』キレイな白毛を汚さずに帰って来たその姿に賛辞を贈ったのである。ありがとう！