スナック・パドック「2023・ベテラン騎手」その３・北村宏騎手

マスター「やるなぁ、北村宏司」
オレ「メインレースのボーデン(牡５・鹿毛・木村厩舎)に乗りに中京へ行ってたんだよ」
ガミ「メインは７着だったんすけど６Ｒ(２歳新馬・ダ1400ｍ)で６人気を１着に持って来たっす」
マスター「どんな馬だったんだ？」
ガミ「ラムジェット(牡２・黒鹿毛・佐々木厩舎)っす」
オレ「坂路調教の途中で左手前に替えたら馬が変わったみたいに急発進するような馬だった」

７月１日中京６Ｒ・２歳新馬戦・ダ1400ｍで６人気のラムジェットを１着に持って来て、今年18勝目、通算1,431勝目を上げた。パドックでは落ち着いていてもう何戦もこなしている古馬のような風格を感じた。レースでは少し出遅れて後手を踏んで芝からダートへ変わる５０ｍ地点では最後方。そこから置いて行かれてしまうのではないかと思う程の二の脚の伸びの無さを見せた。小さくムチが入れられて「しっかりしろ！」との鞍上からの叱咤激励が何度か飛んだ。３角から４角にかけての勝負所では先頭集団から大きく離れて映像にならない位置にいた。それでも４角では何とか追い上げて先行集団の塊に近づいて来ていた。直線に向くと大外へ持ち出して一か八かの大マクリを敢行する。残り２００ｍ地点で５番手まで追い上げて来た。激しい左ムチが飛んで前を目指す。伸びる伸びる。先頭に立ったのは残り５０ｍ地点。先頭でゴール板を通過した。着差は１1/2馬身付けていた。

マスター「騎手もびっくりの大どんでん返しだな」
オレ「序盤では集団に着いて行けないほどの手応えだったんだからな」
ガミ「よくあそこまで追い上げたっす」
マスター「持ってるな、北村宏は」
オレ「調教師もびっくりしたんじゃないか？」

今夜のスナック・パドックはベテランジョッキーを応援する場となっている。マスターはあのレースの余韻にまだ浸っている。「忘れられないレースのひとつになるな」感動して思わず奥にあった古酒の梅酒を炭酸で割って出してくれた。「ウマっ！」ガミは感動で目玉が飛び出しそうだ。「な、何すかこれ？」「感動したろ？」マスターは小さく頷きながら「感動っていうのはこういうもんなんだぞ」言い聞かせるようにそう言った。「感動レースに感動梅酒・・・？？？」俺はどうにも合点が行かない。しかし北村宏騎手・・・やってくれます・・・これからも応援してま〜す。