632件のひとこと日記があります。
2025/09/23 21:38
スプリンターズS・1994年・サクラバクシンオー・その2
「しめた!」すぐに予想から切り捨てることが出来た。バクシンオーの◎は確定的で相手を探すのに躍起になっていたわたしは、続いて目に飛び込んで来たビコーペガサス(牡3・鹿毛・的場・柳田厩舎)の栗東坂路コースでの走りに釘付けになった。回転の速いピッチ走法で素覚ましいまでのフットワークでウッドチップを大きく跳ね上げ黙々と登坂してくる姿を目の当たりにしたのだった。「これだ!」相手は決まった。
レースはヒシクレバー(牡3・黒鹿・田中勝・佐山厩舎)とホクトフィーバス(牡3・鹿毛・中舘・中野隆厩舎)が引っ張り、バクシンオーは5番手を進み、その直後にプロブレムが付け、ペガサスは後ろから4頭目を追走した。レースが動いたのは3角から4角にかけてのカーブだった。バクシンオーは余裕を持って直線を向いたのに対してプロブレムは心配していたコーナリングに失敗して大きく膨らみ中団でもがいていた。ペガサスは末脚を温存して満を持して直線に向いていた。直線の残り200m標識手前でバクシンオーは既に先頭に立ちゴールへ真っ直ぐらに突き進んでいた。直線に向いて内を狙って鋭く伸びたキョウエイキーマン(牡5・鹿毛・松永幹・山本厩舎)が抜け出し2着確定かと思っていたところへ、直線末脚を爆発させて鋭く追い込んで来たペガサスがキーマンをクビ差交わして2着に上がったところがゴールだった。バクシンオーがゴール板を通過した後の映像はペガサスだけが動いていて他の馬は止まって見えた。それほどにペガサスの末脚は強力だった。的場の馬を押し出す手綱捌きが美しかった。坂路調教で魅せた豪脚が中山の急坂で活きたお手本であった。当時創刊されて日の浅いギャロップでは「バクシンオー〜ペガサス」の馬連予想オッズは「25.0倍」近くを付けており、「高級車が買えるぞ」と仲間に言いふらしていた記憶がある。結果は「9.5倍」で「おいおい」となったが「高級中古車に変更だな」と嘯いたあの頃が懐かしい。バクシンオーは予定通りこのレースで引退して種牡馬となり大成功を納めるのだが、あのレースぷりと馬格とスピードを持ってすればそれを後世に受け継ぐ資格は十分に備わっていたことに誰も異論は無く見送っていたのであった。