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2017/09/30 11:07
有名になったら
人間は矛盾する生き物です。読書するのに時代物を調べていたら、やはり藤沢周平がダントツでした。用心棒シリーズがブレークしたのが大きい。これはDVD等の映画やテレビのドラマをビデオで観るとより面白いので、読まない。すると書物で読むなら、調べていくと晩年の「日暮れ竹河岸」という短編集が目についた。江戸十二ヶ月と名所江戸百景に触発されて書いたらしい短編が19編収められている。さぁこれを買って読書の秋を満喫しようと思った。ふっと目次を見ていると「十三夜」という題名が目についた。どこかで聞いたような題名…アッ!樋口一葉の短編…。いや、藤沢周平の短編集なのだから樋口一葉の小説が載るわけはない。なんとなくすっきりしない気分になってゆく。十三夜とは昔から中秋の名月を称して使われてきた言葉だから、誰が書いてもいいのだけれど、何故かすっきりしない。極貧の中筆を走らせ24歳の若さで去った一葉の数少ない作品の一つだから、簡単に使ってしまう神経に言葉を失った。藤沢周平は織田信長を嫌っていたと言う、正義感の強い人だと思っていた。しかし、女性に対しては別の話しなのだろうか。礼儀を正すのは男だけに限定されるのだろうか。これらは単純に暦を題材に使って書いたというなら、女性文学者は意識の中に入っていないということになる。源氏物語くらいならあるのだろう。おそらく男性中心社会を描き続けた末に藤沢周平は男尊女卑の意識が浸透してしまったのではないか。日本のいまだに抜けない男中心社会はこうした作家の意識が作ってしまったように感じられた。