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2017/09/08 08:07
二人の息子
息子の障害は『高汎性発達障害』という、自閉スペクトラムの一種である。
三歳の時、市の児童相談所の勧めで、みどり市にある療養施設で診察を受け、以来今日まで週一回の知的リハビリに通っている。まだ知能的には普通の子より二年遅れの診断である。
四年前、初めてその施設に訪れたのが8月12日。前橋育英が甲子園の初戦を戦ったのもこの日。
高橋光成が全国デビューを果たした日なのである
。
息子が生まれた時、「大きくなったらキャッチボールをしたい。」そう思った。
だが成長するにつれ、他の子と違うと解った時点で、私の夢は潰えた。「この子は優しいから、ボールを投げる事はしたくないんだ」そう自分に言い聞かせるしかなかった。
対して、高橋光成はその後、甲子園の優勝投手になっている。彗星の如く現れ、一気にスターダムに登りつめた16歳の少年の活躍は、傷心の私を存分に力付けてくれた。
彼はやがて、プロに上がり、一軍の試合でも活躍するようになった。
『スーパースター』。当初は彼をこう見ていた。
だが、インタビューの受け答え、少年のような笑顔を見ていくうちに、徐々に彼に対する感情が変わっていった。
「いつも口を空けている」「インタビューはたどたどしく中学生みたい」
「なんか見ていると心配になってくる」等々。
エースナンバーに対し、一つ足りない『17』の背番号も相まって、「ちょっと足りない光成くん」
私の中で、まるで子供に対するような感情が芽生えていた。
彼に、健常者だった場合の息子を重ねて見ているのに気が付くには、そう時間はかからなかった。
「なんか、コーナって息子みたいだな」そう思うと、ファンというより親
みたいな心境になっていった。岡島豪郎や細谷圭には抱かない感情であった。
去年、光成は先発ローテをフル回転で頑張っていた。
5回までは抜群の内容でも、何故か6回になると打たれてしまう。といっても滅多打ちに会うわけではない。
そんな内容だから、リーワーストの8連敗という、不名誉な記録も作った。(普通これだけ負けるとローテを落とされるのだか、前記の通りなのでローテを外されなかった。)
いつも帰宅の車のラジオで試合を聴いていた。「コーナがんばれ!」何度も車内で叫んだものだ。
彼が完璧な存在だったら、ここまで彼に惹かれたりしなかったろう。
彼が不器用だから。何となく頼りないから。愛くるしい笑顔だから。
そして、息子に託したかった夢の形を、まさに表現した人だったから。
今季は、怪我でシーズンのほとんどを棒に振ってしまった。残された試合は残り僅かである。
だがここにきて、先発の一角が崩れ始めた。いよいよである。
沢山夢を見させてくれ。
君は私が描いた夢の結晶なのだ。