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2018/01/29 10:37
偽美談 第5章
遂に最終ステージだ。
我ながらここまでよく資金が持ったものだ。
この週で目標とする利益は130,000円程だと書いたが、自分はもちろんただの素人馬券師だ。
よく少し上手い人の事を、〜に毛が生えたくらいだと表現することがあるが、本当に毛も生えていないほどのズブだ。
ちなみにハゲてはいない。
それはどうでも良いが、自分如きがそれほどの利益を弾き出せる絵が一向に描けない。
出来ることと言えば、とにかく手当たり次第にでは無く勝てそうなレースを厳選するしかないという事になる。
この週は過去1番の勉強をした。
手に入れられるレース情報は片っ端から仕入れ、実績のある予想家の話やブログなど、それはそれはネタを仕入れるのに奔走したつもりだ。
しかし負けられないとなると、一度はゼロになりかけた資金だ、勝負が怖くなる。
慌てれば大きくヤられる、怖じ気付けば利益も出せない、なかなかここの精神的な部分での自分との折り合いが繊細になってくる。
この週はかなりナーバスだったと思う。
言い忘れていたが、このミッションは嫁にも誰にも伝えていない。
その為、このナーバスさを悟られるのも都合が良くなかったので、なかなかハードな精神状態だったと思う。
お気付きかも知れないが、この勝負を通して自分の精神状態は良い意味で活性化し、いつのまにか外にも出られる様になるまでに回復していた。
この時点ではまだ気が付いていなかったが、今思えばそんな気がするのだ。
そしていよいよ、運命の週末がやってくる。
まずは最終週、土曜日の競馬。
ここでしたい話は、やはり障害G1 中山大障害である。
ご存知、主役のオジュウチョウサンだが、この馬だけは競馬から離れてはいたが話は聞いていた。
凄い馬がいると。
そもそも自分はあまり障害レースが得意では無い。
得意では無いというより、見る事自体も苦手なのである。
理由は、落馬を含めたアクシデントに見舞われるケースを良く目にしてしまうからだ。
個人的に馬や騎手が怪我をしたりするのは本当に見たくない方で、観戦そのものが心臓に良くない感じがする為、馬券を買った事も一度も無い。
だが、オジュウチョウサンの走りはちゃんと見てみたいと思った。
そこで、どうせ見るならと初めて障害レースの馬券を買った。
他の出走馬にもほとんど知識は無いわけだが、馬柱を眺めながらアップトゥデイトという馬も凄いという事がわかってきた。
この2頭は間違いなく抜けていることに気がついたからには3連単しかない、1、2着固定で紐を4頭に絞って4点勝負をした。
そしてレーススタート。
各馬の飛越、その度に起こる拍手、独特の温かい雰囲気が素晴らしい。
しかしながら、やはりどこか落馬を心配しながら見てしまうもので最後まで緊張したが、それ以上に釘付けにされたのはあの人気両馬の演じた最高の戦いであろう。
連戦連勝の横綱に挑む大関アップトゥデイトの果敢な大逃げ、距離こそありながら首を低く下げる独特のフォームで番手からじわじわと詰め寄るオジュウチョウサン。
最終コーナーを回って直線へ。
ここからはまさに激闘で、粘り込みを計るアップトゥデイトに猛然と襲い掛かるオジュウチョウサンだが、簡単に抜かせはしない。
一完歩ずつ差が縮まる。
そしてゴール板直前で計ったように見事差し切り、叩き合いを制したのはやはり横綱オジュウチョウサンだった。
一つ一つの毛穴という毛穴が縮み上がり、文字通り身の毛がよだった。
あれだけの距離を走りつつ、あれだけの数の障害を飛越した後に見せてくれた両馬の直線での素晴らしい名勝負。
筆舌しがたいが、こんな素晴らしい戦いはなかなかお目にかかれない。
障害レースあっぱれ。
とにかく感動させられてしまった。
トップガンとブライアンが伝説の叩き合いを演じた阪神大賞典を彷彿とさせる素晴らしい戦いだった。
史上初の大障害5連覇も、あの馬になら可能かもしれない。
そしてまたオジュウチョウサンを次こそ破れるのも、アップトゥデイトかもしれない。
馬券の方も見事に的中させてもらい、わずか930円の配当だったが3000円買っていた為、27,900円の払い戻しを獲得出来た。
障害レースの醍醐味を教えてくれた、あのレースに出走した全ての馬達に感謝したい。
障害馬になった馬たちの出走履歴を見ると、かつて挫折を味わった馬達が多い。
負け続けた未勝利戦、やっと見つけた自分の輝けるステージ、そして栄光。
俺だってまだやれる。
彼等の勇姿に自分を重ね合わせながら、そんな事を思わせてくれたのだった。
続く…