幸せの黄色いおチビちゃん

「ああ、また今日から１週間が始まる」今朝は少し憂鬱な気分で家を出た。

月曜日はフロア全体の朝礼があり、いつもより早く出発したのだが、あいにく少し先の高架あたりで事故があったらしく、気づいたときには車は完全に渋滞の渦に飲み込まれてしまった。

「あーあ、やられた(>_<)。まぁパトカーの音も方々で聞こえてるし、そのうち片側が通れるようになるだろう」

イライラしても仕方ないので、すぐわきの歩道をワイワイ歩いている小学生の列をぼんやり見ていた。

大きい子供に小さい子供。
ピカピカの一年生は、まだ型崩れしていない大きなランドセルに黄色いカバーがかかっているので、遠目でもすぐにそれとわかる。

まるでランドセルが歩いているみたいだ。

「斤量いくらなんだろう？重たそう…。」

きっと入学式から１週間ほどが過ぎ、そろそろ本格的に教科書だのお道具箱だの、いっぱい荷物をしょってるんだろうなあ( *´艸｀)

そんな中、ふと前方を見ると、一人の１年生がうずくまっているのが見えた。
隣には、これまた黄色い女の子が、心配そうな困り顔で突っ立っている。

お喋りに夢中で、何食わぬ顔で通りすぎるガキんちょ達…。


すると途中の信号が変わったようで、わずか５ｍほどノロノロと進み、ちょうどその黄色いおチビちゃんのすぐ近くで、私の車は再び停まった。

「お友達とケンカして泣いてるのかな？それとも学校へ行きたくないのかな？」


声をかけようにも車の中からだし、不審者と間違われても困るし…なんて躊躇していると、ランドセルの波をかき分けて　二人組の上級生らしき女子が、おチビちゃんに声をかけた。


「・・・・・？」
「…。」

「・・・・・？」
首を激しく横に振るおチビちゃん。

「・・・・・？」
「…」

どうやらおチビちゃんは、真新しい運動靴で靴擦れが出来て痛い(ToT)と泣いているようだ。

そうか、入学に合わせて新しい靴を買ってもらったはいいけど、重いランドセルも手伝って、余計痛くなったんだね( *´艸｀)

「カットバンなら持ってるよ。スポンジ・ボブとマイメロだぞ(笑)　窓越しに渡すぐらいならいいかな」

ここぞとばかり、私は前の車を気にしながら、バッグをごそごそし始めたのだが…。

流石は高学年女子(*´▽｀*)　　すぐさま一人がランドセルを降ろし、可愛いポーチから絆創膏を取り出して、傷ついた小さな足に貼ってあげているではないか。

この年頃から、女のポーチはドラえもんのポケットになるんだよね(笑)


「歩ける？」絆創膏を貼りながら そう聞いているようだ。
「ううん」かぶりを振るおチビちゃん。

今度はもう一人の女子が、靴と足の間にティッシュを厚めに挟んでやり、歩けるか試してみるが、おチビちゃんはメソメソするばかり。
そればかりか、一緒にいたもう一人のおチビちゃんも、遅刻が心配になってきたのかメソメソが伝染し始めてしまった。

「どーする？」

上級生女子は、ごにょごにょ言っていたが、意を決したようにガタイの大きい方の女子が、片方の子にランドセルを渡し、おチビちゃんを背にその場にしゃがみ込んだ。

どうやらおビちゃんを交代でおんぶして学校まで連れて行こうという作戦らしい。

確かに十分に成長した上級生は、おチビちゃんとは親子ほどの体格差があるように見える。
学校までは、距離があっても二人で交代すれば何とかなると踏んだようだ。

見た限り、互いに知り合いというのでもないのだろう。おチビちゃんは、知らないお姉さんにおんぶされるのを嫌がっているように見えたが、もう一人の女子がおチビちゃんのランドセルを無理やり降ろさせたので、観念したようだ。

残りのおチビちゃんは、給食袋のような白い袋を担当し、４人の珍道中は始まった。


始業のベルが近いのか、おんぶの女子も、合計３つのランドセルを担当している女子も、残りのおチビちゃんも、意外なほど軽快にずんずん歩いて、子供たちの群れに隠れて見えなくなってしまった。



「スゴイ(≧▽≦)　なんか感激！」

名もなきレディ達に、心から拍手を送りたくなった。

きっと二人とも　すごく素敵な女性になるだろうなあ。


ベソかきおチビちゃん、学校へ着いたらきちんとお礼を言うんだよ。

そして願わくば、担任の先生かお母さんに、今日の出来事をきちんと報告してね。


でも、彼女たちは 先生に褒められたくてやったんじゃないのは見ていてよく分かったし、そんなのどうでもいいんだろうなぁ。

うーーーん、カッコイイ(^O^)／



おっと、こっちも遅刻しないようにしないと…(笑)

渋滞の中、幸せな光景に出会った月曜の朝だった。