エレファントウーマン

象は毎日 話を聴く。

心を傾けて サンドバッグになる。


うさぎにネコ、キツネにタヌキ…
動物の行列は絶えない。

哀しみは尽きない。


うさぎは寂しくなると、爪で自分に傷をつける。

赤い筋を見て慌てた狼がうさぎを抱きしめ、うさぎは何かを手に入れる。


うさぎに悪意はない。

甘えるのが少し上手なだけ。




象は狼の話を聴く。

狼は自分より小さな動物は弱いと思っている。
狼は自分より大きな象は強いと思っている。


狼に悪意はない。

切ないほど優しいだけ。





象は気をつけておかないと大きな身体で誰かを踏み潰してしまうかもしれないから。

知らずに何かを壊してしまうかもしれないから。


誰にも近づかず、心に蓋をするしかない。


象の皮膚は分厚くて硬い。

どんなに赤い筋を付けても 優しい狼は気づかない。





象はとうの昔に諦めている。

可愛いうさぎやネコには死んでもなれないことを。



生きながらただ独り、朽ち果てる場所を探して彷徨っているだけだ。




それまで 毎日話を聴く。

心を傾けてサンドバッグになる。








今日も動物達の行列は絶えない。








象はこっそり呟いてみる。


みんな同じ獣じゃないか。






私にだって心はあるのに。




分厚い皮膚の象の心は 誰にも届かない。