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2018/09/04 00:35

プロフェッショナル【武豊】

【第六章 御す】
《第二項 ディープインパクト
武豊騎手にとって避けて通れない一頭が『ディープインパクト』である。それは七冠馬ということだけでは語ることが出来ないからだ。
初めて調教で跨がった武豊騎手は「このままでは暴走する単なる逃げ馬になってしまうから、直線だけで勝負する馬にしてほしい」と、管理していた当時の名伯楽と評され、メジロマックイーンをも育て上げた当時の調教師である池江泰郎氏に進言する。それを引き受けた池江氏は見事に仕上げ、最後の直線は跳ぶようなディープを作り上げた。
しかし、ディープは決して乗りやすいタイプの馬ではなく、一度スイッチがONになってしまうと一気に燃えきってしまうようなリスキーさを持ち合わせていた。それ故に、極限まで繊細なタッチ操作が求められた。そしてそれは騎手に求められたが武豊騎手はそれを忠実に実践した。それでもレースに行くと毎回のように掛かり武豊騎手を困惑させた。その証しに「何か人の心に訴えるものを持った馬ですよね。だから余計にこの馬の走りを見せたいという気持ちが強いしその反面、この馬に乗っていると凄く神経質になってしまう部分もあるんです」と明かしている。そしてこんなことも...「今度掛かったら行かそうかな」とまで考えていたらしい。事実、安藤勝巳元騎手が「正直、俺には無理だな。どんな乗り味なんだろうって興味はあったけど、俺だとレースで喧嘩しちゃうからさ。乗ってみないかって言われても絶対に断ってたね」と明かしている。
名手・武豊騎手でさえナーバスにしていたディープを「誰が乗っても勝てる」とまで発言した元騎手まで現れた。この理解しがたい発言に岡部元騎手は「武君じゃないと乗れなかったし勝てなかった」と反論する騒動にまで...。岡部元騎手が言う通り、あそこまで切れる脚を使う馬では距離が持たないだろうと、距離を不安視していた者もいたことは事実である。しかし、2000mから3200mまで持たせてしまう技術は、デイープを知り尽くした武豊騎手の技術だからこそに他ならない。それでも武豊騎手は「レース以外のところで余計な力を使わなくなったし、ゲートを出てからの力の配分もきちんとコントロールできるようになった。ついに完成されたな、と思ったら最後...」と、ラストランの有馬記念を振り返っている。
ディープの現役当時、私は「オグリキャップのように、マイルチャンピオンシップや安田記念を使ったら面白いかもしれない」と、勝手に思惑を広げていたことがあった。実際に、あるTV番組でディープが出走していたレースを見ていた元騎手が「武君はどんな距離でもいつも1600mのレースをしている」とコメントをしていたことを覚えている。このことはディープが引退した後の武豊騎手のコメントに裏付けされている。「1600mぐらいのレースを一度やってみたかったなあ。凄い競馬が出来たと思う」と改めてディープを知り、繊細なタッチを駆使した絶妙なコントロールでディープを操っていたんだなあと関心せざるを得ない。
これこそが武豊騎手の『御す』である。

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