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2018/09/27 17:53
プロフェッショナル 武豊 (1)
【第一章 他には真似できないフォーム】
武豊騎手の若い頃は現在よりも腰高でくさび型に近いフォームだったが、岡部騎手(現役当時)の場合は当時四輪車の主流だった流線型のフォームだった。昨今の四輪車業界では流線型よりもくさび型が空力特性に優れている、あるいは室内空間が広く出来るといった理由からくさび型が主流になってきている。手脚が長く長身ということもあり、いち早くこのくさび型のフォームを採り入れたのが武豊騎手であった。しかし、海外競馬を経験した後は若干腰が低くなりご存じのようなフォームに変わってきている。それは、海外の騎手達の技術を採り入れ、自分に合った騎乗技術の影響が大きいのではないかと思われる。それでもくさび型に近いフォームを維持しているのは、その分懐が深くアクシデント等に対応しやすいからだ。相撲や野球でも懐が深いと様々な対応がしやすいと言われており、それを利用した武豊騎手の騎乗フォームは理にかなっていると言える。
又、騎手時代には『ミスター競馬』と称され、調教師としては皇帝・シンボリルドルフを手掛けた故・野平祐二氏が「馬の背と自分の背中のラインが綺麗な平行線であり、それら二本線がある程度離れている。前に行きたがる馬の力を抜くには理想的なフォームです。私たちが真似しようと思っても出来ないバランスの取り方をしていますね」と武豊騎手を評し、「武や岡部を馬群の中でもすぐに見つけられるのは、あの二人が乗ると馬のフォームが変わるから」ともコメントしている。それだけ自身が馬の負担を軽くし馬の自由度を増加させているということに繋がっている。
こうした騎乗フォームは鍛え抜かれた下半身にある。武豊騎手の場合はご存じのように長手綱である。これは馬の首の自由度を妨げることなく、気分よく走らせることに非常に有効である。...ということは...腕に力を入れていないということに繋がる。ではどこでバランスを取っているかというと、勿論下半身である。武豊騎手が馬体に触れているのは左右のくるぶしのみである。他の騎手は手綱を握る手にも力が加わり、上半身と下半身でバランスを保っている。だからこそ重心が後方に位置してしまい臀部が落ちているように見える。武豊騎手が他の騎手より前傾して見えるのは、そうした下半身でバランスをコントロールをし、重心を体の中心に位置させているからだ。私は高校生の時から長年オートバイに乗り続けてきているが、武豊騎手の力の配分とバランスコントロール、そして馬のコントロール技術はオートバイに乗る時と同じである。オートバイも又、下半身でしっかり車体を抑え(足首を強制的に内側に向けることによって自然と膝が内側に向きタンクをホールドする)、ハンドルを支えている腕には力を入れずリラックスさせる。こうすることにより車体は安定し、路面のギャップや急なアクシデント等にも即座に対応が可能である。こうした基本に忠実なライダーの乗車姿勢も又、無駄な力が抜けて非常に安定し格好よく見えるものだ。そして転倒や自損事故等が殆どないのが現状である。
武豊騎手の足首を見ていただくと分かるが、道中でも追い出してからも常に足首は内側に向いてくるぶしによって馬をコントロールしている。しかし、道中にせっかく足首を内側に向けて内股にしホールドしているにもかかわらず、追い出し始めるとわざわざ足首を外側に向けて膝を開き、馬上で暴れるような騎乗フォームに変わってしまう騎手が存在するのも現実である。どちらが馬の負担を軽減し出来るだけ馬を真っ直ぐに走らせ、他馬や他の騎手の不利にならないような騎乗であるかは一目瞭然だ。又、余分な動きをせず馬に負担を掛けない騎乗フォームは、馬に長く競馬生活を送ってもらえるよう、勝っても負けても無事にレースを終えることも武豊騎手の競馬に対する姿勢である。