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2018/10/22 17:26
プロフェッショナル 武豊(4)
【第四章 他を利用した騎乗】
最近のレースでは海外騎手が『馬群を割るのが上手い』と巷で言われているが、武豊騎手も他の騎手や他馬に危険が生じないよう、且つ自身も安全に馬群を割る技術に長けている騎手である。
それは現役当時の岡部騎手に学んだようなもの。東と西の為、毎週手を合わせることは出来なかったが、同じレースに出走する時は岡部騎手の後ろに位置取りすることを心がけていたようだ。それは『絶対に変な動きをしない岡部の後ろは最も安全なポジション』とされていたからだ。現在は武豊騎手が同様のことを言われている。特に海外騎手達には逆に利用されている。
それは安全ということだけではなく、道中に他馬を観察し確実に前が開く部分を見出だすからだ。武豊騎手の場合は、一頭分の馬体幅があってもそのスペースに馬を捩じ込むような手段はとらない。競走馬であれ決して真っ直ぐには走らない、そして狭い所を嫌う馬の本質が顔を出せば、その一頭分しかないスペースは非常に危険であることは言うまでもない。
そこで武豊騎手の馬群を割る方法だが...画像を参照していただく。緑色↑が武豊騎手の騎乗馬、水色↑が脚色が良い馬、桃色↓が脚色が鈍い馬、白線が馬と馬の間隔とする。
先ずは1画であるが、脚色が良い馬と脚色が鈍い馬を判断し脚色が良い馬の後ろに位置取りし追走する。ここで馬体幅一頭分(白線)があっても動かない。桃色↓の脚色が鈍い馬が下がることを待つ。そして脚色が鈍い馬が下がって来たところに自身の騎乗馬を誘導する。それが2画である。斜めではあるが明らかに安全なスペースが出来上がる。そして瞬時に判断しそのスペースに騎乗馬を運び追い出す。プロ騎手であれば誰にでも出来るようだが、なかなか出来ないのが現状だ。それは自分自身の騎乗だけを意識し周りが見えなくなり、目の前の空いたスペースだけを意識してそこへ馬を入れてしまうからだ。だから他馬に危害を加えてしまう騎乗をしてしまう。この騎乗を可能にしてしまう武豊騎手は他馬を見分ける『相馬眼』、観察力と瞬時に判断する『頭脳』、卓越した『操作技術』を兼ね備えているからである。
そして馬のみならず騎手をも良く研究している。それはこれまでも何度となく落馬を経験し、また制裁も科せられてきた苦い経験をも重ねてきたからに他ならない。若い頃は『制裁キング』とまで評されて、何度も騎乗停止を味わってきている。こうしたことを繰り返しながらも2010年には、大きな落馬事故に遭遇してしまった。それでも事故後には『恐怖心はない』と語っている。但し『臆病』らしい。そしてこんなことも...『常に恐怖心を持って乗っている。怖いのは恐怖心のない乗り手です』と明かしている。だからこそ馬と同様に他の騎手のことも良く観察し、上手く利用しながら騎乗に活かせているのではないだろうか。