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2019/06/06 00:59
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二人して人が一人やっと通れるような細い路地を縦になって走った。
わざわざなぜ走るんだとも思えたが寄り道のぶん距離が増えたと考えると短縮のためなのかもしれない。
少し行った先で、何かの店先の窓ガラスが行き止まりの役目をし、左右にT字路に曲がるようになっていた。
「はぁ、やはり久々に走ると、疲れるな」
店を背に壁にもたれた彼が荒い息とともに呟く。ぼくはまだ軽く動いたくらいにしか感じず平気だった。
なぜ曲がったのかを聞く間もなく、彼はまっすぐ左へと曲がって進んで行く。
「映画館なら遠回りだけど」
ぼくが言うと彼は笑った。
「あぁ遠回りしているんだ」
後ろの方で、サイレンのようなものが聞こえた。
振り向いて遠巻きに見る限りどうやらもと来た道のほうで、赤いスポーツカーと青いオープンカーが何かあったようだ。
「運がよかったな。もう少し遅れていたら、あの渋滞に巻き込まれていた」
「運、というよりも、これは、デジャヴな気がするんだが」
彼はアハハハ、とよりいっそう高らかに笑った。
「鋭いな。そう、マエノスベテのご友人とやらが、こうしてぞろぞろと来てしまうみたいだね」
ノリノリな感じで腕を絡めて来る。少し不気味だったので、退けようとすると「彼女のフリ」と言った。
なんて雑な変装だ。
「……しかし、ぼくらが隠れなくてもいいんじゃないか?」
「いや、あれは、目を付けられてる。たぶん僕らが出てくるのを待ち伏せしてたんだ。
これからの用事を思うと、なるべく会わないようにしたほうが無難だろう」
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