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2019/06/14 13:20
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歩いているなかでも、時折夢の中にいるかのように、彼女はうわ言を繰り返す。
「ウワキダ……フリンダ……」
それは決して笑えるギャグなんかじゃなくて、当然のような常識を元に集団で迫ってくる正論じみた迫害だった。
果てしない理不尽が、避けようのない隕石のように直下した、不運だった。
恋愛のベテランなんかが、あの場所に来るべきではないのだ。ぼくらのような人たちは、何かを勘違いした、いわゆる『誰より特別になりたい』相手に好かれることがある。
けれど、そんなの、ありふれている。そして、ぼくらにそんな利用のために関わろうとする人間は、珍しくもなんともなく、極めて凡人以外のなにものでもない。
もし、このぼくが、同じように人間を愛せと言われたら。ひたすら、感情を理解することしないことについて罵られ続けたら――
きっと間違いなく精神が崩壊した。
相手どころか自分自身を愛さなくてはならないから。
そして、誰に言えるわけでもなく、ただ「ギャグ」として、更なる迫害が続くだろうし、そんな社会から、自分が消え去りたいとすら望むはずだ。
「あの写真、ウワキダや、フリンダやフリンカに会っていたかもしれないんだが、誰だと思う?」
ウシさんが見せた写真について、彼は質問した。
「……わかりませんが、見た限り、あれは……」
彼女は何か、言葉を、迷っているように濁した。
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