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2019/06/17 17:20

84

 ああいうのたまに居るよなあなんて諦め気味で「それじゃ」と再び無視して元居た場所に戻って来たとき、やはり彼女は居なくて友人も居なくて、少し虚しくなったりしたが、しかし虚しくなっている場合でもないだろうからと、辺りを見渡す。
通報の用意をしてくれ、という意味が、なんとなく、だんだん掴めてきた。
少なくとも――すきやきが、上を向いて歩くくらいには。
映画館へと一応歩みを進める。

ポスターが並んで貼られた入り口付近で探す目的は果たされた。
『友人である彼』が、女の人に捕まっていたのだから。
ナンパではなさそうだ。
依頼者の彼女は、というと、遠い距離にある向かいの階段に居た。一人きょろきょろとさ迷いながら、下へ降りるところだった。

適当に絡んで、孤立させる作戦が実行されたらしい。
どうしようかと、一瞬迷った。フロアを降りるか、彼を助けるかの二択。

『相手』もうまいこと、人を利用して――単なるバイトに済まない策略を持ってして、ぼくらを追い回してるようだ。
店に入れば合図を示し合わせられるようにしてあるし、何か見かければ携帯で連絡を取るようにしてあるし、例えば個室にした場合でも、強引に、人違いなどを装う度胸を持ったいやがらせ。

「まあ、警察もグルって場合もあるけどな」

田舎の警察は地域と仲良しと聞くし……そしたら、今度こそ、いや考えたくない。
ただでさえ作家に付随する面々から追い回される面倒な身である。まさかかつてはこんなに人権破壊行為をする職業だったとは思いもよらなかった。
 単なる嫌がらせでは済まないことを繰り返している。
珍しいものや、価値のあるもの、変わったものは、根こそぎ狩り取り、強引に配り歩いてネタにしてしまう作家を名乗る『悪徳集団』が存在する。
――のだけれど、今はその話より先に、どちらかを追わねばならないと、ぼくは近くに居た彼の方にまず向かった。

彼に絡んでいたのは「あの写真」の女性だった。

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