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2019/06/22 13:04
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ぼくらが何回目かに、ぐるぐると回っているときだった。
彼女が居た。
屋根付きのすでに車でいっぱいな駐車場を『あえて』通っていたということに視点を変えたとき気がついた。
「確かに、すでに車でいっぱいだから、車や自転車には追えないし此処はカメラが囲んでいる。人の死角も作りやすい」
彼が納得しながら言った。
ぼくもそちらに向かう。
彼女の戦いにねぎらいを込めて手を振る。
助けてもらおうとか、こいつが居ればなんとかなるとか、自分の身を自分で守る考えがない人間は、此処じゃ生き延びられない。そういった他力本願には真っ先に失格の烙印を押される。しかし、彼女はぼくらを呼びはしたものの、それは自分で戦うためであって力にすがるためなんかじゃない。
――こんな相手は、ずいぶん久しぶりだ。
「ははっ」
笑みがこぼれてくる。
「きみは、いい人だね。気に入ったよ。
ぼくは人間を気に入ることはほとんどないんだ。みんなワガママで、自分の為に相手を食い潰すことを、平気で「友情」だの「恋人」だの、吐き気がするからね。きみは違うみたいだ」
彼女は、こちらに気がついて手を振りかえす。
「今言うのもなんだけど、
友達になってくれたら嬉しいな」
「私ですか? 勿論ですわ」
彼女は、少し額に汗をかきつつも、疲労にふらつきながらも前を見据えた笑顔で、うなずいた。
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