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2019/07/01 13:55

105

 ウシさんが写真を渡された人さえ突き止めれば、ウシさんが誰と繋がっているかはわかりそうだったが、少なくともマエノスベテの指示には変わり無さそうだった。

「まぁウシさんが怒って、教室が開きにくくはなったけどね」

いろいろと世間話をした帰り際に、おばさんはそんなことを言った。

「助かったあって人も居るんだよ」

「……おばさんもですか?」

彼女は、なんてことなしに答える。おばさんは私もそうかもねぇと笑っていた。


 帰りも大変だった。
出版社と櫻さんの宗教と、チンピラが入り交じるとこんな妨害が生まれるのかという有り様だった。
まず、家の入り口に、携帯電話を耳に当てた老婦人が立っている。
「もう帰ります、はい、もう、帰りますけぇ」
と、自身の帰宅を告げるような電話を、ぼくらを目にしたとたんに始めた。報告ほどなく3分くらいで、エンジンだかモーターだかの唸りがどこからか聞こえ始める。巡回☆スタートォ!とでも言うのか、バイクや黒や緑や赤や青とカラフルな車がどこからともなく下の道に集まり始める気配がある。

この街、ぼくらが来てからあからさまに治安が悪くなってないか?
と問うことは、なんの慰めにもならないのでやめておく。
それに、来ているのは向こうだ。
「さて。どうやって帰るかね?」
彼が、ぼくと彼女に困惑した声で言う。同じ気持ちだった。

「どうにもこうにもね、これじゃ、気楽に買い物も通学も出来そうにないや」

帰るしかないのはわかっている。だけど、気が滅入るのは確かだ。

「出版社? あ、印刷会社のトラックなら見かけましたけど、なにか、あったんですか」

鋭い彼女だった。

「あー……ちょっとね、囚われの身でして」

窃盗容疑までかけやがってまして。脅迫までしやがりまして。名誉毀損はもちろんのこと、びっくりするくらいのストーカーですとは言わないが。

「た、大変ですね」

目を覚ましてほしいが、お金は人を狂わせると言うから難しいかもしれない。

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