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2019/03/24 23:59
オグリよ、お前はやっぱり「特別な馬」だった。
2010年7月3日午前10時、小雨混じりの曇り空の下、私は馬友さんと新冠の優駿スタリオンステーションにいた。
一頭の芦毛の馬に会うために。
芦毛の馬は、放牧地の真ん中で、のんびりと草を食んで、私たちの方を一瞥だにしなかった。
私たちはしばらく彼を眺めては、写真を撮ったりそっと声を掛けたりしながら、彼との再会を満喫していた。
「じゃあ、またね」。
去り際に、また近いうちに会うことを約束していた。
だが、それは叶わなかった。
その日の夜。
馬友さんから携帯に電話が。
「オグリン、亡くなったって」。
頭をガーンと殴られたような気がした。
現役時代のオグリキャップに対し、私は屈折した愛情を抱いていた。
私は基本的にアイドルが苦手である。
オグリのことは彼が中央にやってきたときから知っていたし、遅ればせながら高松宮杯でランドヒリュウら古馬勢を一蹴してからは本物の怪物だと認めていた。それにタマモクロスとの激闘を通して情が深まって、大好きな馬になっていた。
それなのに、世間が彼をアイドルホースに祭り上げ、競馬になんか興味のない人たちまでが「オグリ大好きですう〜」みたいなノリで彼のことを口にするにつれ、「こんなオグリは、俺の好きなオグリじゃない」と思って、以来複雑な感情を彼に対して抱くようになっていった。
それでも、私にとってオグリキャップという馬は、ずっと、「特別な馬」だった。
屈折した愛情も、引退後は「本物の愛情」に変わった。
「私はオグリキャップのファンです」と、自信をもって言えるようになった。
オグリが、私たちが見た後すぐに亡くなったのはおそらく偶然だと思う。
だが、オグリは「特別な馬」なのである。
あの日は夏休み前の平日で、オグリの放牧地の周りにほかに観光客はいなかった。
多分、「特別な馬」オグリは、特別な思いを抱いている人間に、最後の姿を見せたかったのだ。
僭越ながら、今でもそう思っている。