講談「ダイナマイト慎吾物語」

舞台の中央には釈台、その上には張り扇が置かれ講釈師の登場を静かに待っております本日の演目は巨人のダイナマイトこと石川慎吾物語です。では全国津々浦々の慎吾ファンの皆様、隅から隅までずずずいーと御願い奉ります。♪パパンパンパンパン、朝はパン、パンパパン♪張り扇の音が聞こえて参りました。我らの慎吾は東京ドームの耳をつんざくような大歓声の中、ゆっくりとバッターボックスに歩を進めピッチャーをひと睨みして静かに闘志を燃やしております。その時に慎吾の胸に去来したモノは幼い頃からの野球人生だったのであろうか。時は1993年4月27日、元気な男の子が大阪の堺市で産声をあげた。小学1年生からソフトボールを始めた慎吾少年は3年生で軟式野球、中学生ではジュニア ホークスボーイズに所属をして毎日白球を追いかける野球小僧であった。その才能が開花したのは東大阪大柏原高時代であり主将で挑んだ3年時の夏は大阪桐蔭高にサヨナラ勝ちをして同高校初の甲子園出場を果たしたのであるその大会で全国区となった慎吾は2011年10月27日の運命のドラフト会議で日本ハムより3位指名と高い評価を得た。日本ハムでは2013年のフレッシュオールスターに8番ライトでスタメン出場し3打数2安打2打点の大活躍で優秀選手賞を獲得したのである。順調にキャリアを積んだ慎吾は負傷離脱の中田翔に代わり8月に一軍初昇格を果たした。なんとその初打席で跳ね返った自打球が鼻を直撃して鼻から大出血、ベンチの爆笑を誘い関西人らしく笑いは取ったデビューとなったのである。2016年シーズンオフ、大田泰示・公文とのトレードで吉川光夫と巨人に移籍した慎吾は2017年に開幕1軍入りを果たし期待の高さをファンに感じさせた。長野が不振だったことでスタメン機会が増え6月には中日戦でプロ初のサヨナラ・タイムリーを放ちシーズン99試合出場、57安打、5ホームラン、20打点と巨人に欠かせない戦力となったのであるしかし2018年は春季キャンプより二軍が続き一軍昇格はオールスター明けと大きく出遅れ、その年は17試合の出場で打率1割9分2厘、ホームラン、打点とも0と前年とはうってかわった不本意な シーズンで終えた。救いはイースタンで首位打者と最高出塁率の二冠を獲得して翌シーズンから復帰が決まった原監督により秋季キャンプの野手キャプテンに任命され監督の期待をひしひしとの感じたことである。意気に感じる石川慎吾の本質を見抜いた原監督はいつかこの男がチームを救う時が来ると信じて期待をかけ続けたのであろうか。そしてその時がついにやってきた。打席に入った慎吾は、この大事な場面で自分のバットに賭けてくれた原監督の期待、自分を信じて応援してくれるファンの期待に応えたいと心底思ったことであろう。DeNAエスコバーの投じた6球目を見事にバットに捉えバックスクリーン右へ初のサヨナラ本塁打を放ち原巨人に待望のマジック20を点灯させたのであるヒーローインタビューのお立ち台でファンに感謝の言葉を述べるナイスガイがアナウンサーにうっすらと涙を浮かべていることを問われ「見間違いだと思います」と話しスタンドの笑いを誘った姿は一軍デビュー戦で鼻血を出して笑いを取った石川慎吾そのままであった。♪パパン、パンパンパン♪丁度時間となりました。まだまだ語り足りなく名残惜しゅうはございますが我らのダイナマイト慎吾は、リーグ優勝、CS、日本シリーズと新しいエピソードをまた作り今度はファンの涙を誘う大活躍をしてくれるに違いありませんその時まで皆様、さようなら