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2020/06/27 13:13
絶対王者 その名は内村航平
今まで数々のタイトルを手にしてきた体操の内村航平が来年の東京オリンピックで種目別の鉄棒に照準を絞り出場を目指すことを明らかにした。個人総合でオリンピック、世界選手権の金メダルを取り続けてきた男の決断に少し寂しさを感じながらも鉄棒で金メダルを取り新たな歴史のページを開いてくれることを想像して胸が熱くなった。内村には忘れられない思い出がある。時は2018年4月の全日本個人総合選手権、当時29歳の内村は19歳の新鋭、谷川翔に敗れ10年ぶりにタイトルを逃したのである。それは私にとって衝撃的な出来事であり、絶対王者の内村航平がリベンジをする場面に立ち会いたいと思ったのである。その機会は1ヶ月後のNHK杯、前日は東京ドームで巨人の勝利を満喫して勇んで乗り込んだ東京体育館、全日本の持ち点との総合点で雌雄を決するNHK杯の内村はスタート時点で谷川に0.832点差の3位、この日の内村はミスなく確実に演技を重ね得点を伸ばしていく。しかしトップを走る谷川も絶好調で最終種目の鉄棒を迎える前は谷川に0.564点差の2位と依然リードを許していた。超満員の観客が一斉に見つめる中で鉄棒の演技が始まった。そして、ついに内村航平が鉄棒の下に歩み寄った。シーンと水を打ったような静寂に包まれる中で内村の演技が始まった。スタートから数々の高難度の離れ技を繰り出す内村の姿に会場は興奮のるつぼと化す。それを楽しむように離れ技で空中に飛んではガッシリと鉄棒を掴む内村、その度にスタンドでは大きな歓声とも安堵のため息ともつかぬ声が観客の口から絞り出された。そして最後の着地が決まるか観衆が固唾を飲んで見守る中、何事もなかったように微動だに動かない完璧な着地を決める内村航平。その直後に、こだまのような大歓声が東京体育館を包んだ。内村の出した高得点が若い谷川に大きなプレッシャーとなり谷川は鉄棒から落下するまさかの結果となった。そして絶対王者の内村航平健在を証明するようにNHK杯で前人未到の10連覇を果たしたのである。その後、度重なるケガに苦しめられオールラウンダーとして忸怩たる思いをしてきた内村の重い決断に心からのエールを送りたい『世界は東京オリンピックでの貴方の美しい体操を待っている』と。