鶴留明雄先生

競馬を見始めてから既に四半世紀を過ぎた。まだまだ競馬のけの字も知らない私・・・しかし尾形藤吉、武田文吾の名前は知っている。私が競馬のレース記憶があるのはシンボリルドルフの時代。つまり１９８４年頃。鶴留明雄という調教師の名前を知ったのはリワードウイングの勝った８５年のエリザベス女王杯。

トウショウレオという活躍馬も出現した時だった。当時はまだ関西馬というものが関東人にとってあまり馴染みが無い時代。今になって思うことは、関西圏のレースの馬券を重賞以外買えなかった記憶がある。情報も関東と関西では分断されていると思えるくらい。関西圏のレースを全て見れること、未勝利戦や平場のレースを見れるなんて考えられなかった。クラシック路線に、関西の素質馬が東上すれば西の秘密兵器と言われるのが納得するくらい本当に情報がない時代でした。

あの頃から競馬の魅力に魅せられ、その素晴らしさを活躍馬、騎手との繋がりで魅せてくれたのが、私にとっては名伯楽の一人、鶴留明雄先生です。個人的に私の競馬人生でとにかく相性がいいという贔屓目を差し引いても、輝かしい成績を持つダービートレーナー。そしてオークスも制覇している牝馬の鶴留のイメージが強い調教師さんです。それもそのはず、厩舎の看板馬といえばスイープトウショウ。もう多くを語る必要はないでしょう。


スイープにも沢山の思い出がありますが、私の一番鮮明な記憶はトウショウオリオンです。池添謙一重賞初制覇は雨の阪神、夏のＴＶ西日本北九州記念の逃げ切り勝ちでした。当時後楽園のＷＩＮＳで残りの有り金３０００円で馬券を買い、絶叫して応援していたのが懐かしい・・・(笑)まだヤンチャしまくりだった当時の私はこの馬によって一生の思い出になる初の北海道、爆笑旅行をプレゼントしていもらいました。

鶴留先生の思い出は馬券以外でも沢山の魅力ある馬と出逢えたこと、そしてタヤスツヨシ、チョウカイキャロルを始め、シスタートウショウ、ノーザンドライバー、アサカディフィート、コガネパワー、スプリングソング、シーイズトウショウ・・・と競馬を盛り上げた個性ある活躍馬が沢山います。鶴留先生の人柄、信条はジョッキー起用にも現れているのは知っていましたが、それを更に調べて分かったのは作家の木村幸治氏の言葉。鶴留先生を、「やはり武田文吾の影響を受け継いだ、古風かもしれないが、義理人情の調教師といえる」と評しているという一文。彼の馬生、哲学が一貫して武田文吾という偉大な師匠、調教師の素晴らしさを如実に表しています。

先生がいなければ馬の素晴らしさも、人との繋がりが織りなすドラマの凄さを、競馬の楽しみを味わうことができなかったと言っても過言ではないほど私にとっては偉大で、競馬を教えてくださった調教師の一人です。

先生ももうすぐ定年でカウントダウンが始まっています。愛弟子池添謙一は本当に残り少ないチャンスで先生に最後の重賞プレゼントができるか・・・。私はもう理屈抜きにローレルブレットを応援してしまいます。

鶴留先生の引退は私にとっても感慨深いものです。池江先生とは違う意味で、私の競馬人生の節目になる出来事。輝かしい一つの時代が終わることを意味します。
競馬はどこまでも奥が深い。いつかは競馬のバの字に辿りつけるかな(笑)