中山グランドジャンプ雑感

普段は平地のG1しか書かないのですが，大阪杯，桜花賞と書き損ねたのもあり徒然なるままに…

まずは冷や水を浴びせる様ですが，過去の名馬との比較が取りざたされている事に関して。これは平地でも良く行われる事ですが，平地以上に障害は余りにも施行条件が現在と過去で異なり過ぎるかと思います。例えば一番分かり易い負担重量。私が見始めた頃は過去の勝ち馬は増量されていました。それがいつの間にか定量戦となりました。またここ数年，大障害コースの落馬率が大変低くなっています。これはどなたかのコラムに記載されていたのを読み知ったのですが，実は大竹柵・大生垣共に難易度を下げているからです。因みにWikipediaにも記されていました。しかしそれはそれで，オジュウチョウサンの強さやアップトゥデイトの素晴らしさを貶めるものではありません。彼らは与えられた条件下で各々の素晴らしい能力を発揮しており，例えば過去の施行条件であっても同様な競走を見せてくれた可能性があります。それを前提に過去の名馬との比較を楽しみたいものです。

レースそのものは見慣れている平地の長距離戦とは様相が異なり，本命・対抗の2頭どころか他にも数頭彼らに果敢に絡んで行く混戦模様。果たしてペースが速いのか遅いのか分かりませんが，クランモンタナ騎乗の熊沢騎手は「ペースが遅かったので楽について行けた」との発言があった事から，競ってはいても時計としては早くなかったのかもしれません。それでも他馬から圧力をかけられると時計以上に厳しくなる側面もまた事実です。

アップトゥデイトはオジュウチョウサンのみならずマイネルクロップやクランモンタナからも常にマークし続けられました。しかしマークした方のクランモンタナが6着となりマイネルクロップに至っては最下位に沈んでしまいました。林騎手自身も4コーナーで後ろを確認していますが，既にオジュウチョウサンには抜かれていましたので，2着も危ういと感じていたのではないのでしょうか?それにもかかわらず漁夫の利を狙ったニホンピロバロンに対して，最後は逆に再度差を広げて9馬身差を付ける怪物ぶりを見せつけました。実際自身がマークしたレコードを1秒縮めましたから。しかしその前には怪物を上回る○○がいましたが…

さて怪物を上回る○○に何が最も適した表現なのかは分かりませんが，オジュウチョウサンがその○○に当てはまる事は間違いないでしょう。中山大障害の接戦を受けて今回は自らも常にアップトゥデイトをマークし続け，いやそれどころか先手を打って真っ向勝負に持ち込む王者そのものの姿でした。しかも今回は前哨戦無しでこの結果。果たして暮れの中山大障害までどのような軌跡を描く非常に興味深いですが，他の方も恐らく思ってらっしゃる天皇賞春参戦。無理でしょうね(笑)…

林騎手は騎手生活最晩年においてベストパートナーと出会ったもののオジュウチョウサンには連敗を喫してしまいました。しかし決してそれは引き立て役などではなく，こちらもまた主演と違わぬレースぶりでした。そして林騎手・アップトゥデイトの存在がグランドマーチスたちの時にはいなかった「好敵手」であり，それはオジュウチョウサンと並び賞されるものでしょう。