ルーラーシップの思い出（３）

そして迎えた5月30日、日本ダービー。

実力は通用しないはずがありませんが、2400mではまだ折り合い面の不安があり、またメンバーの層もさすがに厚いため馬券圏内鉄板とまでの自信は持てず、◎ペルーサとの2頭軸で3連複を少し買いました。

戦前、ロングスパートを掛けたいと話していた鞍上の四位でしたがレースでは勝負所で包まれて動くに動けず、直線でもゲシュタルトに前をカットされて立て直すロス。

それでも最後は際立った脚で伸びて来て、皐月賞馬ヴィクトワールピサと差のない５着。

スムーズなら勝ち負けてできていたはずで悔しい思いをしましたが、ルーラーがトップレベルでも通用することを世間に示せた満足感もありました。



しかし期待の秋は復帰が大幅に遅れ、12月の鳴尾記念にまでずれ込んでしまいました。

ここは因縁のヒルノダムールとPOG馬リルダヴァル、そして初の古馬が相手でしたが、この条件なら普通に走れば負けないと判断。単3万、複10万勝負でした。

鞍上岩田が今回は特にロスなく比較的ソツなく乗ってくれましたが、着差的には辛勝。
それでも久々だったことと展開を考えれば完勝でした。

そして直線のフットワークを見ても、力任せにゴリゴリ追う岩田はやっぱり手が合っていないと感じました。
ともあれ、半年振りの復帰戦を見事勝利で飾り、今後が楽しみになりました。




12月26日。
まさかの有馬挑戦。
この日は珍しく大学時代の友人4人と現地観戦でした。
前走久々を好時計勝ちしたことによる反動と、1800のハイペースから2500の超スローの落差に対応できるかが心配だったので、当時鬼神の如き走りを見せていた◎ブエナビスタに次ぐ○として三連複を少々買いました。


レースはスタートでやや出遅れて道中も終始外を回ったロスはあったものの、折り合いは思っていたよりずっとスムーズで、力があれば十分に弾けられる展開。
しかし直線では前との差を詰めることはできず、外から来たブエナビスタには一瞬で交わされての6着。


前が上がり33秒前半で上がったとかなら納得できたものの、34秒3〜4を差せないというのは余力がなかった証拠で、形としては完敗。
ルーラーが完敗したと感じたのはこれが初めてでした。

しかし本来のルーラーであればこんな負け方をするとは思えず（あの程度のロスで脚を無くすようなエンジンではない！）、やはり前走を久々で好時計勝ちした反動が出たのだろうと感じました。
同期３頭にも先着を許し、世代最強の座は奪えないまま2010年は幕を閉じました。



2011年1月16日。年明け初戦の日経新春杯。
ここはJC馬となったローズキングダムと宿敵ヒルノダムールも出走、世代最強を目指す上で何としても勝ちたいレースになりました。

しかし鳴尾記念以降のローテが厳しく疲労が残っている予感がしたので馬券は買わず、僕は彼女と一緒に外出先でテレビ観戦でした。

「淀みないペースを前目で折り合って早めに動いて４角先頭で押し切る」。
ルーラーにとって恐らく一番合っていると思っていた競馬をテン乗りのリスポリが見せてくれました。

追いすがるヒルノとローズを寄せ付けず、最後は逆に突き放しての堂々たる競馬。
本格化を感じさせたレースでしたね。




3月26日。 ドバイシーマクラシック。
ブエナビスタ、ヴィクトワールピサ、トランセンドという最強メンバーで挑むドバイＷＣがこの日最大の目玉でしたが、僕は一番チャンスがあるのはルーラーだと感じていました。


しかしこの日のルーラーは他馬にぶつけられた為か掛かって逃げる形になり、直線では既に余力がありませんでした。
展開が展開だけに仕方ありませんが、失速するルーラーを見たのは初めてでショックでした。
ヴィクトワールピサ、トランセンドがＷＣでワンツーを飾ってくれたことが、せめてもの救いでした。

それにしても勝ったリワイルディングは素晴らしく強かった。
いつか完成したルーラーでリベンジしてほしい相手でしたが、この後故障でこの世を去ってしまったことは残念でした。




少し間隔が開いて、5月28日の金鯱賞。
彼女との結婚を決めた僕は、自宅で母親と観戦していました。

泥んこの不良馬場の中、ルーラーはまさかの大出遅れ…
PATで単勝2万円、複勝10万円を買っていた僕は気が気ではありませんでした。

しかし落ち着いて少しずつポジションを上げていったルーラーは、直線でも力強い伸びを見せ、完璧な逃げを打った皐月賞馬キャプテントゥーレを差し切ってしまいました。
こんな芸当はよっぽどの怪物でなければ実現不可能です。

絶望、興奮、そして狂喜乱舞。
密度の濃い2分間でした。