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2015/01/16 23:23
スカートの丈
男の視線に無頓着で、無警戒だった「あの子」が、制服のスカートを短くした。
何か心境の変化があったのだろうか。やっと意識するようになったのだろうか。
その変化に立ち会ってしまった僕は、戸惑いを覚えながらも気づかない振りをした。
恥ずかしがり屋で、目立つようなことが嫌いなはずの彼女に、何があったのだろう。
もし原因があるとすれば、それは僕かもしれない。僕が、あんなことを言わなければ、彼女は今でも長いスカートを穿いていたかもしれない。
僕には、彼女の変化が喜ばしいことなのか分からなかった。彼女を無垢な殻に閉じこめておけば、まだ当分、彼女は目を覚まさなかったはずだ。
殻を脱ぎ捨てた彼女の目には、いったい誰が映るのだろう。
僕には奪えなかった彼女の心を、誰が奪っていくのだろう。
彼女はいつも僕の隣を歩いていた。そう、あのときまでは。
僕が、あんなことを言わなければ、彼女は変わらず僕の隣を歩いていただろう。
僕が、あんなことを言ったばかりに、彼女は僕を避けるようになってしまった。
言わなければ良かった!
僕は、後悔しかない日々を送りながらも、出来るだけ自然に振る舞った。
気持ちが沈んで、それが顔に出たときは、疲れた、と言って誤魔化した。
けれども、会えば必ず意識してしまう。僕の心は、囚われたままだった。
そんな僕に出来ることは、彼女との距離を適切に保つことくらいだった。
クリスマスが過ぎて、お正月が過ぎて、冬休みも終わった。
ずっと彼女を見ていた僕だから、彼女の小さな変化にも気づいてしまう。
あのときから、頑なに僕を見ようとしなかった彼女が、僕のほうを見た。
二度、三度、近くを通り過ぎたとき、確かに彼女は僕のほうを見ていた。
僕が自意識過剰でなければ、彼女の中で何か心境の変化があったはずだ。
そもそも彼女は、どこまでを意識して行動に移しているのだろう。謎だ。
僕に、分かるはずがない。分かっていれば、あんなことは言わなかった。
あんな……困らせるようなことを、僕は。ああ、僕は。