あんずんの大冒険（その２）

あんずんとは、安寿と厨子王、すなわち森鴎外先生の名作に名を借りた、我家の愛猫のこと。
今日は彼らの大冒険の日、というより試練の日でした。
といっても年に一度の健康診断（体重測定と検温と、予防注射）のため、病院へ行くというだけのことなのですが、これには過去のある出来事が伏線となっているのでした。

我家は年に二度の島帰りのため、数日間無人となります。
その間あんずんは動物病院にお泊りとなります。
今年の夏がその最初の時でした。
その時、あんずんは恐るべき反応を示したのでした（娘の話）。
診察のためキャリーから出されたとたん、すんは虎に変身、あんは腰が抜けました。
腰が抜けても危険はありませんが、虎が狭い診察室にいては血を見ずにはすみません。
うなり、吠え、空手家のように壁を使って三角蹴り、ついには天井を走った（ように見えた）のでした。
そして引き取るときには、看護師から、何も食べないのでこれ以上の宿泊は無理、と言われたのです。

ね、分かりますね、大冒険の意味が。
しかし、実を言うと、私は絶対の自信と楽観をもって今日という日を迎えました。
というのは、あんずんは、私に対して絶対の信頼を持っていると確信していたからでした。
日々の努力が実を結ばないはずがないと自惚れていたのです。
私がそばにいて、声をかけてやれば、何事も起こるはずがないとたかをくくっていたのです。

その３へと続くことになりました。