ながちゃんだってやるときはやる（2）

ながちゃんは実は日陰の身です。

我家はコンクリートの狭い箱で、もちろん犬猫は禁止されています。ときどきエレベーターホールの掲示板に、ペットは禁止されているからね、共同生活のルールは守ってね、などと管理人の厳しい警告が張り出されます（これ結構辛い）。以前の管理人は、二度目に会ったら「あらＳさん」ともうこちらの名前を憶えていて親しみやすい人でしたが、数年前に代わった新しい管理人さんは油断できません。

年に一度健康診断を兼ねて予防注射のため、病院へ行きます。
まず廊下に人気が無いことを確認してドアを出ます。すでに忍び歩きになっています。エレベーターに人が乗っていたらやり過ごします。しかし途中で乗ってくる人は止められません。エレベーターが途中停止した瞬間、我々に緊張が走ります。意味のない言葉を大声で喋りだします。バスケットに押し込められたながちゃんが時々ニャウン、ニャウンと鳴く声を消すためです。この辺で頭の中にはスパイ大作戦のテーマが響き渡っています。
エレベーターホールに着くや否や、我々は飛び出します。後ろは見ません。おそらく奇異な表情を浮かべているだろう同乗者は無視します。
徒歩20分程で病院着。帰途同じことが繰り返されます。テーマが007のテーマになることもあります。厳しい任務はこうして毎年繰り返されるのです。

ながちゃんが可哀想だって？だから脱走したんだと！なんですと!?（怒）
猫は一定の安心できるテリトリーが確保されれば、十分幸せになれるのです。今やながちゃんは毛もふさふさ、一日20時間たっぷり寝ています。何不自由無い生活とはこのことです。

でも脱走騒ぎは二度起こしました。一度目は我家にきて半年ほど経った頃のことでした。